満足度★★★
黒木華さんを観に新国立劇場小劇場へ行ってきた。
とはいえ、「重版出来!」や「みをつくし料理帖」とはまったく異世界のチェーホフの4大戯曲である。
音楽で言えば、ポピュラーのライブとクラシックのコンサートくらいの違いがある。
観客にも演劇研究家といった風情の白髪の方も多く見られ、場違いなところに迷い込んでしまったという不安が湧きあがってくる。
しかし、どうもそんなに構えて観るものではないようだ。
この戯曲には感動的なストーリーというようなものはない。
登場人物は貧乏らしいが悲惨な暮らしをしているわけではない。
他人を欺くような悪人はいないが特筆するほどの善人もいない。
そういう普通の人々がブチブチと愚痴をこぼす。
そんな話なのである。
今の私にこれを「面白い」と言える感性とか能力はない。
「日常の仕事は何かと思ったら請求書書きかい」とか「人妻に2人も言い寄るとは現代よりも自由だね」とかいう感想を持つくらいである。まあ、そのうち見る目もできてくるだろう。
出演者の皆さんはテレビでもお馴染みの超一流の方々である。
個人的には山崎一さんと小野武彦さんの実物にお目にかかれただけでもうれしい。
彼らにとってこのような舞台は修行の場なのであろうか。
緊張感が場内を覆っている。
しかし、ドクターだけはまるで観客に語りかけてくるような親しみのある振る舞いをしていた。
この役は作者に代わる語り部のような立ち位置になっているのだろうか。
ギターの生演奏が心に沁みた。久しぶりの「悲しき天使」はチクリと胸を刺す。