天の空一つに見える 公演情報 髙山植物園「天の空一つに見える」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    土俵の下には何が潜んでいるのか
    設定が女相撲の話である。
    前半の進行でほのぼの系の話と思いつつ見た。が、そうではなかった。

    ネタバレBOX

    日曜日に集まり、相撲仲間と汗を流し、ちゃんこでお腹を一杯にし、ときにはたわいのない会話をしつつ、日常のうさを晴らしていた。それが前半にあたる。
    このままのほのぼのとした雰囲気で進むのかと思っていた。

    ところが、親方の妻の死をきっかけに、誰にも言えなかった想いを1人が話すことで、死と生(生命)をめぐる、それぞれが心に秘めていた悩みや感情が一気にマグマのように噴出する。
    土俵の上では楽しげにしていても、その下には、それぞれが抱える悩みが渦巻いていたのだ。

    各人が自分が今まで思っていたが口にしなかったことを、同時多発的に叫び、訴える大混乱ともいえる終盤の様子は、爆発のようだった。言えなかったことをいったん口にしてしまうと、止まらない。

    叫びのそれぞれの細かい内容はすべて聞き取れるわけではないが、観ている人にとって、その人の中にある気持ちに共鳴する言葉だけは、(たぶん)聞き取れたり、耳に残ったのではないだろうか。
    その耳に残った台詞(音)が人によっては、嫌悪感を生んでしまうのかもしれない。
    それは、言葉そのものを覚えていなくても、聞きたくない言葉が逆に残ってしまう。生々しくて、他人の口からわざわざ聞きたくないような言葉だったりするのかもしれない。

    「女」と「血」の関係が、「生(生命)」と「死」に絡んでくるのだろうが、生(命の誕生)は、女と結びつくが、死は、女のものだけではない。そこを頼りに男女の枠を超えて進むように見えて、かなり女に軸足が残っているため、そこまで進めなかったような気がする。

    「女」に軸足を置いている話の部分は、男が共感を持ったり、理解したりしづらい。もちろん、男女以前に他人のことは、理解などできないのだが。
    ただ、演劇である以上、子宮のない者には理解できない、という態度ではなく(そう感じさせてしまうのではなく)、他人(男)にも理解の糸口を見せてほしいと思う。
    今回、その糸口は「身近な人の死」であった。「女」についての考察はまったくわからないに等しいが、「身近な人の死」については観ながらいろいろ想いを馳せた。

    そして大混乱。その気持ちは少し理解できるような気がした。
    男の中には、こういう叫びはあるのだろうか、とも思った。

    身近な人の死に対して、「忘れてほしくない」「忘れたほうがよい」という2つの意見が衝突し、その結論めいたものがないように、ラストの混乱は観客に投げっぱなしのようだったが、下手に結論めいたものを示されるよりも、これでよかったように思えた。
    そんな一気に加速したようなラストは好きだ。

    細かいことだが、方言への作者の想いは理解できるのだが、なんとなくそれが板についてない役者もいるので、逆に違和感を感じてしまったのが残念。

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    2009/01/28 01:22

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