四色の色鉛筆があれば 公演情報 toi「四色の色鉛筆があれば」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    素晴らしい・・・
    シアタートラムでどのような舞台を見せてくれるのだろう。
    4つの短編でどのような構成で見せてくれるのだろう。
    素舞台の開演前の舞台を見ていても、ワクワクさせられてしまいます。

    会場に集まった人たちの期待値の高さがうかがえる開演前。
    ロビーは演劇関係者が多かったです。
    平日なのに立ち見がわんさか出る盛況な舞台でした。

    圧倒的に密度が濃くて、気を抜く事なく集中した90分。

    ネタバレBOX

    とにかく気が抜けないし、気を抜く事さえ忘れてしまう。
    我を忘れて舞台に見入る。
    そんな4つの物語。

    どれもギミックに富んで演劇的な企みに満ちた作品ですが、話の内容自体はありふれたふつうの出来事で、それがとても丁寧に描かれています。
    その描き方に注目が集まるわけで。
    旧作2本だけど「あゆみ」の短編バージョンは見たことなくて、「反復かつ連続」は初見。

    「あゆみ」
    去年アゴラで見たロングバージョンとは違う、3人で演じる短編バージョン。
    一生を描ききるというよりは人生の選択と大人への成長を描いているという印象。
    最初、役者さんが床にマットを敷くけどそこは黒子の通り道で、芝居が始まったら四角の照明が照らされて、そこがアゴラの時の白いスクリーンの意味合いになります。
    その舞台を上手から下手へ移動しつつ、役柄を固定せずに、ひとりが照明から抜けるとその役を別の人が演じつつ照明の中に入ってくる。
    このループで構成されているのは変わりません。

    人だけでなくて、話も何度も何度も反復されて、それが時間軸に必ずしも従ったものではないけど、確実に登場人物の成長を描き出していました。


    「ハイパーリンくん」
    今回の新作。
    授業で生徒が「緑色の空を見た」と発言した事を受けての、生徒と先生の間で交わされる数学的、科学的な広がりをみせる話。
    10人以上が舞台に並ぶけど、実際の登場人物の数は不明で、それは特に問題ではなくて。
    言葉がラップになってゆくという舞台だけど、単に言葉を交わすだけじゃなくて、円周率を延々リズム良くつないで言ったり、西暦の年号をあげて歴史を語ったり。
    最後は役者さんが作る円が客席まで包んで、照明が落ちて暗闇の中続くセリフが宇宙的な空間の広がりを見事に演出していました。


    「反復かつ連続」
    一度見てみたかった作品。
    一人の役者さんが朝のありふれた風景をひとり芝居する事から始まって、出かけて終わり。
    次のループではさっきのシーンで役者さんが発していた言葉がスピーカーから流れて、それに被せて別の役を演じる。
    それを多重的に重ね合わせる事でひとりで一家の朝の風景を描く作品。
    最後、それまで重ねられた会話だけがスピーカーから流れて人が舞台上から姿を消すけど、しばらくしてそれまで登場していないと思っていた「おばあちゃん」が姿を現します。
    このおばあちゃんのパートが凄く効果的で、これによってこの短編はギュっとひきしめます。
    最後のおばあちゃんの「行ってきます・・・」のつぶやきが切ないです。


    「純粋記憶再生装置」
    今回用の新作2。
    床に紙が敷き詰められて、その上で4人の役者さんがひと組の恋人たちの思い出を描きます。
    4人で2人の役なのだけど、会話を交わしている役のひとは口パクで、役ではない人がセリフを言います。それを次々場所と人を入れ替えていくのが全体の構成。
    時間軸が前後してゆくのが効果的で、交わされる言葉は他愛もないけど凄く繊細で、心の移り変わりを的確に描き出していました。


    これだけ素晴らしい舞台を見せられると、演劇を見ていて良かったと思います。
    演劇でなければ出来ない表現かと言われるとそうではない部分もあるのだけど、演劇だからこそ感動が大きいのは確かです。
    目の前で役者さんがこれを表現しているからこそ価値があると思わせてくれます。

    演劇の魅力を最大限に感じさせてくれて、作品世界に浸らせてくれる大切な90分でした。
    星10個でも20個でも付けたい。。。

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    2009/01/28 00:36

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