「蝉の詩」 公演情報 劇団桟敷童子「「蝉の詩」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/05/04 (木) 14:00

    4日午後、すみだパークスタジオ倉で上演された劇団桟敷童子公演『蝉の詩』を観た。
    始めに書いておくが、今年観た舞台の中で、脚本・演出・役者の3点すべてが充実していた大変優れた舞台であった。

    ネタバレBOX

    舞台は、元自宅のあった周辺に出来た公園でホームレスを始めた元アイスクリーム屋の蝉への独白、そして子供の頃の回想で始まる。炭鉱から出る石炭運搬を主な仕事としている鍋嶋舟運送一家と、その中心的取引相手とは聞こえは良いが、要は舟運送に仕事を回してくれている土井垣鳴明堂。娘が刺し殺そうとまで思い詰める鍋嶋の親方で通称・鍋六は飲んだくれで金遣いが荒い。将来舟運送が下火になると察した長女・壱穂はトラックを使った陸運、次女の菜緒はアイスクリームが名物の食堂を始める。10代半ばで米兵に犯された過去を持つ三女の輝美は母親の好きだったレコードを聴きながら部屋にこもり、鍋六がどこからか連れ帰ってきた四女の織枝は高校へ進学する。土井垣から受ける仕事でなんとか続く鍋嶋一家。しかし、過労とヒロポンで壱穂は事故死、菜緒は病死、輝美は恋人にレイプされたことを告白した反応に悲観して自殺。すべては鍋六の放蕩三昧が原因とあって怒りの織枝は鍋六を包丁で刺すが、娘を殺人犯に出来ぬと舟に乗って姿を消す。残った織枝。そして土井垣の女社長が取り出した自社製オルゴールから奏でられた音楽は、輝美が愛したレコードの音楽のそれであった。
    菜緒から製造法を伝授された織枝はアイスクリーム屋を営むが、結局上手くいかず今は年老いてホームレスとなって故郷に戻ってきたのであった。
    苦労が大きく幸せは一瞬という人間の生涯を、蝉の一生に重ね合わせた悲劇の連鎖劇。

    テーマが悲しく重いからであろうか、桟敷童子にしては笑える演技をいつもより多くちりばめて悲しさを和らげていたのは、観客への配慮か、脚本・東の執筆中の心の痛みを和らげるためか。いずれにせよ、それはそれでよい効果を上げていた。
    役者としては、鍋六役の佐藤誓、その長女・壱穂役の板垣桃子、土井垣の女社長役のもりちえ、開演前から舞台で演技をしていた老婆(晩年の織枝)役の鈴木めぐみの4人が出色。四女・織枝役の大手忍も好演で会った。
    名前は挙げていない他の役者達の熱演も素晴らしかった。
    客演役者をも巻き込んでの桟敷童子魂炸裂。よい舞台を見せてもらった。

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    2017/05/05 17:53

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