マークドイエロー 公演情報 もぴプロジェクト「マークドイエロー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    日本の3大奇書(黒死館殺人事件、虚無の供物、ドグラ・マグラ)、その最後の小説に着想した本公演は、その世界観の魅力を引き出していた。
    着想した小説の難解さ、それは周知のことである。この公演は、あえてその世界を描こうとした野心作のようにも思える。戸惑うような雰囲気は、客席内に入ってすぐ実感できる。囲み舞台のどこに座るか?けっして凝った作りではない、むしらその逆のシンプルな設営。しかし何となく”あやしげな”空間、その視覚から様々な感覚が目覚め、開演までを楽しませてくれる。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台は真ん中に細長い台座空間。その周り(客席と台座の間)を回廊のように使用する。台座真ん中、そこに上から四角く囲うように幕が垂れ下がる。
    冒頭は、この幕内での若い男女の泣き嘆きから始まる。直ぐに出演者全員による怪しげな足取りのパフォーマンス。序盤はその雰囲気作りに腐心しているようだ。物語はストーリーテラー(さひがしジュンペイ サン)が観客に話し掛けながら物語へ誘う。その俯瞰した立場から実際物語へ溶け込んで行く。また現実と過去(3年程前か)とを往還するような回想シーン。その多重層な演出は、混乱・錯乱に満ちた舞台をしっかり観(魅)せる。

    梗概は、警察病院・精神科医療室内と主人公の兄・妹が暮らしていた部屋を同一空間で表す。その違いは同一登場人物を2人1役で分かり易くすること、状況に応じて登場する周りの人物で区別させる。犯罪を犯したであろう男、その男の記憶を呼び起こすことで事件の解決を…。なぜ事件解明にその必要があるのか、その混乱・錯乱に満ちた舞台は観応え十分。正気から狂気へ変質していく兄と妹の関係。その”血”の繋がりがなければ、単なる若い男と女という生身の異性という存在になる。その人間の性(さが)が純粋であるがゆえ異常な行為へ…。その描き方が虚実の世界(俯瞰)、時間のズレ(回想・往還)として表す。

    また舞台技術が巧み。舞台上の照明は上から照射し幾何学的な文様もしくは文字を映し出し精神の不安定さを表す。音響は阿呆陀羅経に木魚の音・不気味で不安を煽る。全体的にサイコ・サスペンスというジャンルであろうが、その雰囲気作りは上手い。舞台上に絞った照明と客席も巻き込むような照明、その使い分けが観客の集中力を物語に向ける。

    気になるのが、物語の意外性があまりなく、ラストは大方の観客が思い描く結末だったと思う。警察のプロジェクトの意味合いが不明確で、その国家的視点がどう絡んでいたのか?警察側が記憶を教えないのは自白の強要にならないため。その一事件のためのプロジェクトとしては壮大過ぎないか。
    物語の意外性は、公演そのもののテーマになり、より面白さが増すと思うのだが…。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/04/01 09:55

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