怒りの旅団-アングリー・ブリゲード- 公演情報 ワンツーワークス「怒りの旅団-アングリー・ブリゲード-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     怒りの旅団とは1968年頃から71年迄イギリスで活動したアナーキストグループの名であり、今作はこの実話をベースに書き上げられた戯曲である。原題は、The Angry Brigade。今作で極めて面白い特徴は、犯人グループも、犯人を逮捕しようとするロンドン警視庁の特捜チームもほぼ同年輩の若者同士だということである。犯行グループは、資本主義に毒され、毒されていることすら分からなくなってしまった人々の現在までのパラダイムをシフトしようとしている。その為には、破壊も辞さない。(追記2017.3.23:0:51)現代の若者たちの為に当時の時代背景を書いておいた。

    ネタバレBOX

     ところで、1968年から始まった世界的な若者の反乱の背景にあったもの・こととは何であったか? トンキン湾事件を口実にドミノ理論に則ったアメリカが資本主義国の「正義」を振りかざし何ら道義的理由なしにベトナムでジェノサイドを展開していたことが大きい。先日ベトナムを訪れた天皇・皇后が面会したドク氏は米軍による枯葉剤の影響でシャム双生児(ベトちゃん、ドクちゃん)として誕生、日本で治療を受けたという経緯がある。
     また、ベトナムの人々を300万人以上虐殺した米側の兵も当然のことながら5万数千の死者を出し、米兵死体の縫合、整形などは日本国内でもたくさん行われていた。文明の発達と武器輸出など軍産複合体の都合による多額の儲けによって潤うアメリカ人の暮らしの中に、死が音もなく忍び込んでアーリントン墓地の墓標がどんどん増えて来、メディアがその事実を喧伝し始めるとアメリカ国内でも反戦のうねりが盛り上がった。
    1968年にはフランスの5月革命があり、ドイツ赤軍、今作に登場する怒りの旅団がイギリスで、日本でも各セクト、ノンセクトラディカル、べ兵連などのムーブメントが世界を揺るがした。中国では文革の時代でもあり、毛沢東語録は日本国内でも入手することができた。文革では紅衛兵や四人組が有名であるが紅小兵の存在も忘れてはなるまい。
    日本では大学の自治を根拠に大学で学生が講師を招いて自主講座を開いたり、フランスではジャック・デリダらが哲学を推進するグループを結成、各国からの留学生、フランス国内の様々な階層の人々にも門戸を開いて新たな思想の息吹を伝えていった。
     無論コミュニズムとアナーキズムのイデオロギー論争、左翼対右翼の論争も至る所で為された。
    左翼・右翼などの政治行動には走らなかった者達の多くはヒッピーとして時代に仇花を咲かせ、サイケデリックと呼ばれたサブカルを作り出し、演劇界でもアングラ演劇が流行り、ダンスには土方巽という天才が出て暗黒舞踏を創始した。こんな時代であった。

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    2017/03/18 17:35

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