満足度★★★★
鑑賞日2016/07/29 (金)
シャープな、ときに笑いを含んだテンポの良い会話で、前半はバイアウト・ファンドなどの用語や意味と、登場人物の人となりを観客に伝えていく。中盤から後半にかけては、調べる側と調べられる側の緊迫したやり取りで、出来事の背景や重さを感じさせる。
証券取引等監視委員会の特別調査の目的は、インサイダー取引の犯人探しだが、マチュリティの中の誰がそれをやったのか……という謎解きは、実はさほど難しくない。
それよりも、なぜ彼がそれをやったのか、というところに焦点がある。いや、なぜ、というより、どんなふうにそこへ追い詰められていったのか、という方がいいだろうか。動機めいたものは、実はさほど詳しくは語られない。少なくとも自分はそういう印象を受けた。しかしその一方で、この物語そのものが、彼がそれをしてしまうことになった理由を語っているのだとも思えた。
ストーリーが進む中で、前作の場面が何度もインサートされる。予想以上に続編であることを意識した造りだった、と感じられた。
喰うか喰われるか、という印象もある金融の世界で、ある種の理想のもとに会社を立ち上げていった前作の高揚と、いつの間にか歯車が狂ってしまった今作の中の彼ら、いや彼と。
いったいなぜ……。観客席にいてさえ、何度も何度もその問いに立ち戻る、そういう物語だったのかもしれない。