テレビが来るぞ! 公演情報 劇潜サブマリン「テレビが来るぞ!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    面白い!..ブラック・コメディの秀作
    タイトル「テレビが来るぞ!」は、自分勝手にテレビ撮影が来る事によるドタバタ喜劇を思い込んでいたが、もっと深いところを抉り出すような公演であった。
    当日パンフに作・演出の ちば悠平 氏は「排他的な田舎にとって、テレビが来るというのはとてつもないイベントなのでした」と書いている。自分も地方出身者だけに何となく分かるような気がする。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、大きな木または鉄製の枠、それが歪んで立てられている。その向こうは白いカーテンで仕切られている。そのイメージはテレビ画面、そしてこれから始まる物語のシュールな展開を思わせるような変形し崩れかけたような枠である。

    梗概...母は有名女優であり多忙であったが、娘のために必ず手料理ということを宣伝(売り)文句にしていた。しかし、実際はレトルト食材を使用していることが分かり、TVレポーターに追跡取材されることになる。

    娘=女(久山彩サン)は成長し、ある目的を持ってド田舎にやって来た。そこはTV放送される(中継)場所ではなく、したがってTVを持っている村民もいない。彼女はこの村にTV放送できるよう画策を始める。手始めに村での家畜加工場を支配下に置き、テーマパークの建設、村長を誹謗中傷し自分が村長選で勝利する。そして地元の名士・地主を籠絡し村全体を支配する。何事にも話題性を提供するがTV放映されることがない。ついには隣村を接収し、そこにダム建設を推進し湖底に沈めるところまで推し進める。その実現のために武力行使も辞さない。

    いつの間にか支配者として君臨している。そんな彼女に反発する勢力(陥れられた人々)が現れ、彼女の思惑が瓦解していく。色々なパロディを盛り込んだ風刺も面白い。例えば、チャップリンが映画「独裁者」で地球儀に見立てた風船を弄ぶ(尻で押し上げる)ような場面を、この芝居では木枠をTVに見立てて弄ぶ(尻場面はそっくり)。

    歪んだ木枠の向こうは、TV(放映)の中である。白いカーテンが引かれ画面が映し出され、第三者の姿が映るという巧みさ。都会と田舎の違いを際立たせるため、俚言・方言で喋るが、それも彼女によって標準語に統制される。効率・合理的という名の下に地域文化も中央・標準化という発想も怖い。
    反対勢力に追い詰められ、彼女自身がTV取材の対象になる。その放映が実際、白いカーテンに顔のアップ等が実写される。その表情がリアル。

    役者は各キャラクターを立ち上げ、敢えて喜怒哀楽をオーバーに表現し、面白可笑しさを増長させており見事。
    ブラック・コメディとして観応え十分であった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/12/18 16:30

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