ミカエル 公演情報 MCR「ミカエル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ガス爆発
    主演の川島潤哉さんの演技に、観ている私も騙された。
    こうまでしないと相手の気持ちは判らないということか。
    そして判っても、それが幸せをもたらすわけではないということか。
    櫻井さんの”個人の超身勝手な理屈に普遍性を見い出す”視点が素晴らしい。
    主人公を取り巻くキャラの立ったユニークな人々が楽しい。
    客入れ時から劇中まで、BGMが好き、3ブロックに分けた空間の使い方が上手い。
    そして罵詈雑言は相変わらず“愛の証”。

    ネタバレBOX

    横長の舞台は3つに分割され、上手は友人の家、中央は喫茶店、下手はボロい部屋。
    川島(川島潤哉)はマンションのガス爆発により記憶喪失となった。
    妻の道子(外村道子)は、昔の楽しい思い出が残る部屋で暮らせば
    記憶が戻るのではないかと考えて、懐かしのボロアパートに引っ越してくる。
    ある日、町の喫茶店に入った川島は店の従業員飛鳥(後藤飛鳥)からひどく罵倒される。
    記憶を失う前の川島は、いったいどんな男だったのか、そして飛鳥に何をしたのか…?

    妻の前では理想のサラリーマンを演じ、飛鳥の前では奔放な自分をさらけ出す。
    結果妻からは物足りなく思われ、飛鳥からは振り回されただけと言われてしまう。
    求められる自分と本当の自分、使い分けは当人だけでなく相手をも疲弊させる。
    そんな現代人の処世術を皮肉に眺める視線が鋭い。
    周囲はただ面白がって情報収集するだけで、その心に寄り添うことはしない。

    彼の記憶喪失が本物かどうかが、最後に明かされる構成なので
    過去の再現シーンが無いことが物足りなさの理由かな。
    だが再現シーンで男の二面性を鮮やかに見せるのも良い気がするけれど、
    あくまで“川島自身”に添うかたちだったのも、それはそれでリアルな経過だった。

    喫茶店のマスター(澤唯)が絶妙の立ち位置。
    ダイナマイトボディ(古っ!)の伊達香苗さん、インパクト大!

    ラスト、妻と愛人の対峙に思わず泣きそうになった。
    一人の男の、全く違う面を愛した女二人が、傷つきながらもそれぞれを思いやる、
    “会話しない会話”の妙が素晴らしかった。
    これがあるから櫻井さんの罵詈雑言はやめられない。



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    2016/12/14 15:17

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