荒野ではない 公演情報 SPIRAL MOON「荒野ではない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    花五つ星
    何と美しく悲痛な!(追記2016.11.25)

    ネタバレBOX

    青鞜に集まった女性たち、平塚 らいてう、伊藤 野枝ら主幹となった女性をはじめ、野枝の夫となった大杉 栄、らいてうのツバメのオクムラ ヒロシ、女流作家の千代子、跳ねっ返りのコウキチ、天才博徒の彦六、らいてうを支えるトミエ、皆から先生と呼ばれる理解者でもある支援者、イクタ チョウコウらの群像劇。Baudelaireの詩ではないが、人々から石を投げつけられ、唾を吐きかけられてもおかしくない程、時代のそして意識のレベルを遥かに超えていたアナーキーで真摯な姿が伝わってくる秀作。
     青鞜は、100年以上前の1911年9月から1916年2月迄発行された雑誌だが、この雑誌の作・編集部が今作の舞台である。発行しては、発禁を食らい、部数を伸ばすことは愚か、講演を打つことも会場を貸さないという形で禁じられ、剰え為政者のプロパガンダに載せられた民衆から石礫を投げつけられながら、女性、弱者の解放の為に戦った人たちの姿を描いた群像劇である。
     無論、登場する個々人のうち社会的弱者に関しては、より深く描かれている。村外れに住んで居た彦六の父は、中々やり手であった。結果、村の中心部に住む人々よりいい家を建てた。ある日、村の中心部の人間よりいい家を建てたのは生意気だとして、実家を燃やされ、家族を奪われた。因みに村の境界領域に住んだのは被差別部落民であり、これは差別の具体的で的確なイメージであろう。野枝が、この話を聞いて激高し、彦六の家族に仇為したる連中の家々を打ちつけて出られないようにし、油を撒いて火をつけてやれ、と叫ぶように言うシーンなど、その優しさ故の共感と真摯な怒りを突き付けてくる。
     更に、増々右傾化する世の中で、それでも諦めず粘り強くしたたかに生き、己の精神を荒野にせぬよう努める姿勢も良い。
     芝居を観なれている観客にとっては、演出の見事さも、見所である。ファーストシーンなどは、一挙に作品に引き込まれるだけの演出センスを見せてくれるし、シナリオの質も高く、役者陣の演技レベルも高いことは言うまでもない。舞台下手に植物の影がずっと映っているのも、非常に好印象である。弱者の声のように決して強くはないが、普遍的な生命の在り様を示しているようにも感じられるからだ。照明、音響の使い方も上手い。

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    2016/11/25 04:37

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  • 追記もアップしました。
            ハンダラ 

    2016/11/26 01:04

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