満足度★★★★★
平板だが巧みで見事
音楽家の伊藤靖浩が、一人芝居のミュージカルを年に10本書いて10年続けて100本のプログラムを作ると言う企画の第1弾。イサドラ・ダンカンを描いた「それでも私は踊りつづける」福麻むつ美、ジュディ・シルを描いた「生殺しの蛇」ハマカワフミエ、バルバラを描いた「piano black」岡田あがさ、の3本を観たが、どれも興味深い作品に仕上がっていた。ただし、ミュージカルということで、物語の複雑さはあまりなく平板で、むしろ歌を使った表現に気を遣ったように思えた。驚くのは、イサドラ・ダンカン,バルバラという有名な2人に挟まれたジュディ・シルを取り上げた点。必ずしも有名でない70年代の女性シンガー・ソングライターを取り上げたのは、伊藤でなく演じたハマカワの要望だという。
ただし、上演順には疑問があり、数多くのミュージカルを経験した福麻をトップに持ってきたのでは、ストレートプレイ中心のキャリアのハマカワ,岡田は歌ではツライ気がする。その分、演技で魅せる2人の印象は強烈だった。その意味で、3者3様の魅力をしっかりと感じさせてくれる上演だった。