インスタントカフェ・シアターカンパニー『NADIRAH』 公演情報 フェスティバル/トーキョー実行委員会「インスタントカフェ・シアターカンパニー『NADIRAH』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    他者とは、、、
     宗教(イスラムとキリスト教など)の違いから生じる問題を中心に、国家(シンガポールとマレーシア)の違いや民族(マレー人、中華系、、、)の問題など、さまざまな角度から、「他者」との共生の意味が問われている。
     IS(イスラム国)によるテロが世界的な問題となり、同時にイスラム教徒が不当な差別にもさらされる中、そしてアメリカではイスラムや移民を差別してはばからないドナルド・トランプが大統領になるという状況の中で、この作品が問う「他者」との共生の意味は大きい。
     正攻法で非常によくできている脚本、シンプルだけれど繊細に配置された美術と演出。演技もすらばらしかった。

    ネタバレBOX

     何よりもこの脚本に内包された複雑さは、近年の日本の作品には見られないもの。作家の能力も勿論だけれど、多様な民族が共存し、宗教が存在している中で、このような問題が切実な亀裂として現実に起こっているのだと思う。
     それと同時に、物語構造としては非常にシンプルなのは、宗教という明確な分断事項があるために、問題の中心を明示しやすいのだろう。日本にも排他主義は跋扈しているけれど、問題の本質が掴みづらく、物語化を現実が拒んでいるような部分がある(例えば、在特会や相模原事件の犯人のようなわかりやすい差別団体や個人が一番の問題なのではなく、なんとなく似た感性をもってそれを受容してしまっている群れとしての社会の方が問題など)。日本の方がより現実の闇が深いとも言える。日本のこの問題に戯曲が言葉を与えるというのは、難しいなと思う。

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    2016/11/12 08:55

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