満足度★★
揺れる舞台
空間ゼリーの「I do I want」は、今でも思い出に残る舞台。
大学サークルの部室という狭い世界で、傷つくことを怖れるゆえに、お互い、正面から向き合うことができない部員たちの、じめじめした人間関係が丁寧に描かれた舞台だった。主体性のない部員たちは、空気に流され、一人、また一人と友人たちを傷つけて行く。
そんな世界に嫌気がさした部員のひとりは、最後に、傷つくことを引き受けて、恋の告白を行い、ふられる。小さな希望を提示して、舞台は終わるが、その誰も居なくなった舞台に日の丸が浮かび上がる。サークルと恋愛というとても小さな社会を、「日本」というとても大きな社会と重ね合わせる手法が、深い印象を残した。
そんな空間ゼリーが、アイドルたちと組んで商業演劇に挑戦。それは、やっぱり、アイドルを全面に押し出すエンターテインメントなんだけど、それでも、どこかに空間ゼリー色が残っているみたいな、不思議に揺れる舞台になっていて、こちらも、揺れた。