狂犬百景(2016) 公演情報 MU「狂犬百景(2016)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ”狂人百景”
    謎の狂犬病が蔓延して、犬にかまれた人間がゾンビ化するという事態が発生する。
    ここで描かれるのは人を食う犬ではない。
    “食われるかもしれない”という状況下で、次第に感情の振れ幅が大きくなり
    狂気に至る人間の思考回路だ。
    1~4話のうち、3話の緊張感が素晴らしかった。

    ネタバレBOX

    ウッディなブラインドが縦横に張り巡らされた背景、
    その手前に椅子やラックを置き、薄明りの中で場転が整然と行われる。
    客入れのBGMも静かで私は好きだ。
    犬の吠え声などの効果音も“びっくりさせてやろう”ではなくて距離感が自然。

    第一話・・・「お前のそういうのが嫌で別れたんだよ!」という元夫の言葉が最高!
    持論を展開する元妻の押しつけがましさが上手い。
    「大義名分を掲げて信じる道を説きまくる」めんどーくさい女っているいる。
    犬にかまれて異常な状態になっていくにしてはのんびりした雰囲気。

    第二話・・・“噛まれてゾンビになるかもしれない恐怖”より
    “どうせ死ぬならその前にやっておきたいことがある”という人間の欲望が怖い。

    第三話・・・4つの中で最も登場人物のキャラが濃く、シリアスに出ていて出色。
    社会の不安を逆手にとり、同時進行でリアルな描写の漫画を描く漫画家が
    作品のために「正当防衛」と称して犬狩りをし、
    撮った画像から絵を起こす、という狂気。
    彼を取り巻くボクサー崩れとファン上がりのアシスタント女性、編集者の4人が
    血まみれで狂喜する様に戦慄が走る。
    漫画家とボクサー崩れとの会話、ワケアリそうなライターとカメラマンの隠し撮り等
    緊張感が途切れず、ぐいぐい惹き込まれた。
    漫画家役の山崎カズユキさん、過去舞台を2度ほど拝見したが
    今回は名前を見るまで分からなかった。
    ノーマルな発言の裏に強烈な優越感や差別意識を持ち、
    それに一点の疑問も抱かない、まさに“普通のようで狂人”が上手い。
    カメラマン役の古屋敷悠さん、やはりこの人が出てくると台詞に緊張感が走る。
    何かやりそう感満載。

    第四話・・・3話までの“その後”が描かれる。
    「動物愛護センター」と言いつつ実は“殺処分センター”として機能している現実に
    打ちのめされながら働く人々。
    そこにこれまでの登場人物がちらほら出入りしている。
    3つのエピソードのまとめ方が面白かった。
    犬をもらいに来るNPO法人さんのキャラが秀逸。
    ポップンなら「犬の役」かもしれないが、今回は人間。
    第二話とは打って変わってどーしよーもない、軽い男が素晴らしい。

    ハセガワアユムさんは、グロい場面を想像させるのが巧みなので
    さらりと言わせているが、一番震撼させたのはあの男だった、
    というオチもまさに「狂人百景」だった。


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    2016/10/10 03:40

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