満足度★★★★★
演劇を超えた演劇
過去にはカフェやホテルラウンジで公演しているそうで、その場合、店の雰囲気や装飾品がそのまんまリアル舞台美術として機能するだろうが、今回はこの場所、非常に不利ではないだろうか。
入室して、まずそう思った。
無機質だし、特に舞台照明もなく、天井のLEDが部屋全体をまんべんなく照らしている。当然音楽も無し。
近代オフィスのお洒落さはあるが、あまりにもリアルな空間すぎて、とても演劇を鑑賞する雰囲気ではない。
ステージ予定スペースにはテーブルも無いのだから会議モノじゃなさそうだし。
結論から言うと円盤ライダーはこの不利な状況を、全て身体ひとつで覆してくれた。
開演。ドヤドヤと入ってきた役者さん達。
どうやら男達は、協力し合って会社を設立し、このオフィスを手に入れるところまで漕ぎ着けたようである。
全員が達成感で高揚しハイテンションである。
私は冒頭からハイテンションの芝居はちょっと苦手で、どうしても一歩引いてしまうクセがある。(世界観に入れた後なら全然OKだが)
たとえ最前列であっても座席と舞台の境界は明確で、距離を勝手に感じてしまう。
なのに本作では距離など意識することは無かった(できなかった)。
舞台と客席の境界は存在せず目の前、後方の夜景、ガラスパーティション、倉庫、とにかく会場のすべてを味方にして役者のパッションが炸裂する。
客イジリなど一切無いのだが役者熱が力づくで演技の世界へ巻き込み、そして完全に引きずり込んでいく。
よく体感型というが、これもまさに体感型である。
ストーリーは当然存在するが、それよりも役者ひとり一人の生きざま、人間そのものを観てくれと言わんばかりのガチ魂。
こういう演劇を何歩か超えたようなスタイルは何と表現すれば良いのだろうか。
企画力+実現力+演技力そして熱い役者魂。すべてが揃わなければ不可能な公演。お薦めするしかありません。
あっ、あとすいません。この公演コメディーです。