満足度★★★★
舞台と役者が溶け合った瞬間
いい感じに使い込まれたツヤのあるフローリングの部屋には丸形クッションひとつと電球スタンド1脚。目の前には空へとつづくベランダが大きく開放され、灯りのついたランプがふたつ。めちゃくちゃオシャレじゃ~ん。
観客席が並べられ、それは実質舞台上で観劇するのと同じ状況。
自分の来た回では観客数10人。(元々大人数を収容できるハコではない)
この場所で10人のために5人の役者さんが演じてくれる。めちゃくちゃ贅沢。贅沢すぎるっ!
始まる前からこんなゲスなことを考えてしまう自分はもしかして場違いなのではと少しソワソワしてきます。
開演。観客と同じ出入り口から入ってきた役者さんたちの醸し出す声、立ち振る舞い、台詞のなんと美しいことか。
社会に上手く迎合できないガラス細工の様な登場人物たちは、寄り添うように言葉を紡ぎます。
実際の会場であるキッドアイラックアートホールが今回で最後となる特別な想いも作品に織り込まれ、何だかやり切れない気持ちになりました。
所々、目の前の光景が美しい絵画のようでハッとしてしまいます。
この場所に決して「足が酸っぱくなるまで働けー」という輩を立ち入れてはいけないっ。
少女を登校させるよう説得に来た教師の声が、紳士的ですごくまともな事を言っているのに残酷な力量を帯び、野太く聞こえたのが興味深かったです。
ラストシーンもとても美しかった。
貴重な空間に身を置かせてもらえて感謝です。