---黄離取リ線---【ご来場いただき誠にありがとうございました!】 公演情報 劇団えのぐ「---黄離取リ線---【ご来場いただき誠にありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    愛情を管理できるか...
    「黄離取り線」という「黄」こそ注意を促す色、今作は現代社会が抱える子育て問題へ「親権免許制度」が導入されたら、という一石を投じる。

    親権の捉え方、それは親の持つ権利ではなく、子を守る権利として存在すると...。
    愛情という計測できない不確かさは、制度という管理社会よりも計り知れない慈愛に満ちている。その理屈世界では説明出来ない親子関係とは...改めて考えさせる公演である。
    この制度の瑕疵を含め、理屈としては物足りないが、「制度」と「愛情」というハードとソフトの両方をバランスよくというには時間が足りないし、散漫になるかもしれない。自分ではこの展開、好きである。

    この計り知れない物語は、分かり易く観せる秀作だと思う.。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    上演前は、タイトル「「黄離取り線」の文字と点線が書かれた白い布が吊るされている。始まるとその線に沿って切り取られていく。そして現れた舞台セットは、真ん中が出入り口、金網状の衝立2台、上手・下手に段差がある小台。客席に向かってと客席に平行に木道のように長板が置かれている。
    今まで観た「劇団えのぐ」公演に比べると、物語を巧く魅せるという点では物足りなかった。高みからは覗く行為のみで、俯瞰でも立場でもないような中途半端な気がする。

    冒頭は少年が父親から暴力を受け、倒れているところに姉が帰宅...そんなシーンから始まる。それから2年、両親の元を離れ、母の兄(伯父)の児童養護施設で暮らしている。この施設には、姉弟の他に5人の子供たちがいる。この施設が事例「親権免許教習所」とし、入所子供たちの同意がなければ、親権免許が交付されない。
    この5人は、実親からの暴力、期待過多、育児放棄など様々なトラウマを抱えている。「愛情」という表現し難いことを、エピソードを挿入することで外形していく。その構成は、なぜ「親権免許制度」が必要なのか納得度を高めている。
    なお、予定調和は分かっているが、もう少しラスト近くまで”何か”思惑がありそうだ、と思わせても良かった。

    親子の距離は子の年齢(成長)とともに伸び縮みするが、いずれにしても永遠の難問ではなかろうか。幼き頃の縮んだ距離は愛情、伸びた距離は自立の証として測(計)るのだろうか。その量る制度として「免許」という管理制度が必要か?

    本公演での作・演出の松下勇 氏の役であるが、LGBTなどの性的少数者を演じているが、そのキャラを登場させている意味は何か。新聞などでは、その人たちも子供(家族)を持ちたいような記事があったが...「親権免許」を持たない者は親になれない。その意味からの問題批評も内包し、社会派ポップに仕上げたのであれば鋭い。

    さて物語は、幼き幸太(さいとう えりなサン)の男と男(父)の約束...おぼろげな記憶(意識)を辿り、その約束を破ることによって現実の世界に目を向けた。おぼろげな記憶と真実の境が明確になり、薄雲の世界の向こうに希望が観えるようだ。そんな期待溢れる物語、松下氏の「絵の具」で描き出したようだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/10/02 14:28

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