満足度★★★★★
美しき絵画
役者がいい!実に味のある芝居を魅せてくれる。これだけのレベルの方たちではないと演じるのが難しいと思われる作品。木場さんの円熟した演技、銀粉蝶さんの体から滲んでくる感情表現も見応え有り。奥村佳恵さんの危うさ
、浜田学さんも魅力的だ。
でも、それだけイイ役者がいても私の一番の印象はセット!
両サイドは暗闇のまま、その額縁の中のそれを観ている。何でもなさそうなシンプルな空間がものを言う。最初の血を思わせる真っ赤な照明、ラストの真っ白な明るい照明、斜めに入る陰ですら一枚の絵を思わせる。ひとつひとつの空間を絵画のように描くセット。そこには簡素なテーブルと椅子があるだけなのになんと意味有り気で美しいことか!ただただその美しさに圧倒されてしまった。
ストーリーは二人が死んでしまった所から始まり、徐々に時間が遡って行く
たいていの場合、始めに結果が有り、その後にストーリーが始まる。これは逆戻りしていく作品。なのにその説得力は半端ない!ひと場面ひと場面が
繋がれた絵画のようで、実に美しい眺めだった。その一枚一枚に込められたひとの感情や想いも、しっかりとそこに封じ込められたように感じた