満足度★★★★
台詞台詞台詞。
タテヨコ3度目、リクウズ2作目。
野田秀樹「風」ではないが、「ばり」の、台詞の途切れないリレーが、感情の追っつかなさを顧みず続けられる、テンポとシュールさが良い。
台詞には十分遊びをこめているが、しかし通常の対話が軸で、言葉遊びが真実(実在)に転換したりする野田とは異なる。
話は遺産相続をめぐる醜い争い・・というよくある話だが、外郭に位置する人物たちがまたそれぞれシュール。最後に登場する公証人などはじじいの役を女性がやっている。
ただ、ストーリーは現実的に進んでおり、後半ややリアルさに欠く部分は勿体ない。意表を突くストーリー重視なので、変えようは無いだろうが・・。
遺産や遺言を巡る話なので、現行の法律が登場する。最大の転換点は、長女が二つの遺言書を破棄する場面。
・・死んだ父が自宅に残した遺言の他に、公証人に預けた遺言(あやしい)が出て来る。その他、父がよそで作った子ども(成人した女性)の登場、死を見取った家政婦による「内縁の妻」証言と、混迷がきわまる。このとき、長女がぶち切れてテーブルに置かれた二つの遺言をズタズタに破いてしまう。
スッとする場面ではあったが、ここで弁護士に「遺言書を破棄した者は相続の資格を失う」との条文を読み上げられてしまう。
多分「既に内容を確認済みの遺言」を感情にまかせて破いてしまった、程度でこの条文は適用にはならない。長女がショックを受けてしまうのもちょっと。これを見て妹が(夫の意に反して)遺産放棄してしまう必然性も見えにくい。そして、この顛末が、親族を除く全員の共謀で為されていた、というオチも、その延長で「リアル」さを欠いた。
従って、「長女の悲劇」以降のくだりをあまり深刻な作りにせず、「そんな事もあり得る」程度に、飄々と終えてくれれば、ちょっと辛子の効いたブラックユーモアに収まったのではないか。
とにかく台詞の応酬にうまみのある芝居、最後までシュール路線で突っ走ってみてもよかった。