満足度★★★★
リーディングのための戯曲
・・として書いたものだという。ラジオドラマというジャンルがあり、聴き手の想像力を当てにすれば無理な設定も可能になる。例えば人物の容姿の設定も、読み手の容姿とリンクさせる必要はない、どころか、少しリンクしていたりすると笑いがもらえたりする。良い事ずくめかと言えば、やはり「読む」行為に終始する役者を見るのでは物足りない、という向きもあるだろう。
今回観た2作は、簡潔にして、飽きさせない展開で観客を引きつけた。展開が命だ。
「復讐・・」は美女三人が三様の魅力を発揮し、読了して礼を終えた立ち姿も美的に様になっており、リーディングの演出の一環かと思われる麗しさ(恐らく三人の組み合わせと、作品中でのキャラの振り分けが良い)。 中学時代の酷薄ないじめの対象となった主人公と、それを主導した張本人が、社会に出て共通の「親友」となったもう一人の結婚話によって再会する事になる。復讐心の行方は・・・。それはともかく、三人の関係のキーとなっており、かつ「復讐」のストーリーを潤色する背景(無自覚の内に)となっているその女性との関係の内実が、最後に一瞬垣間見える。媒介でしかなかった存在が、二人の関係(怨恨であれそこには濃い関係性がある)を相対化するものとして、初めて見え、でもってドラマは終わる。こういう急展開のオチも、リーディングならではと言える。
「ある盗聴」は主人公の女性が夫の死の現場に居る、という非日常の状況から始まり、以降もつづく「非日常的時間」の終息までの物語。「盗聴器」と郵便によるコミュニケーションを受け入れた女は、秘密を共有されてしまったその「相手」を信頼し、そこにある関係が育って行く。その途上で夫の弟との関係もあるがそれも「盗聴」ありき。女は「相手」の指示されるままに弟と関係する、というあたりで相当な異常領域に踏み込んだ事になるが、観客はその状況も受け入れ、さらにその先へと誘導される。
謎解きは、「相手」の物語が語られる段で遂げられるが、ただ受動的にみえた女が実は「相手」に変化をもたらしていた顛末がそこにはあって、関係の可能性のようなメッセージが、「オチ」となっている。
リーディングの演出も様々あるが、二つの作品は「読むだけ」の形式にふさわしい、またそのために書かれたと分かる作品。