名なしの侍 (28日より大阪公演開幕!直前予約受付中!) 公演情報 劇団鹿殺し「名なしの侍 (28日より大阪公演開幕!直前予約受付中!)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    現代音楽と時代劇の融合...次代劇として期待大!
    映画「7人の侍」(黒澤明監督・1954年)を思い出す。もちろん、モチーフもストーリーも関係ないが、物語の骨太さ、斬新さという点で似ているような気がする。また観せ方のイメージは絢爛豪華というよりは、地を這うような血・汗・泥という言葉が似つかわしいところも同じような。

    乱世...戦国孤児が生きることに汲々とした暮らしから、いつの間にか野望に魅せられた人間へ変貌していく。その生き様をダイナミックに描く。
    また、芝居としての観せ方も大胆であった。その1つが舞台セットの妙である。劇団鹿殺しは、 こまばアゴラ劇場、青山円形劇場、紀伊國屋ホールと劇場規模が大きくなってきている。
    今回はサンシャイン劇場であり、どの客席からでもしっかり観えるよう工夫している。そして劇団の管楽器隊と現役ミュージシャンでバンドを編成し生演奏で聴かせる。そのため上手側に大きく演奏スペースを確保している。芝居の舞台面は斜めになっており、1階最前列や2階席からも観やすいような、いわゆる八百屋舞台の作りである。

    もう1つ感心したところ...演出の格調の高さである。現世・来世を往還する姿に有名な文学作品を思わせるシーンが...
    (上演時間2時間5分)

    ネタバレBOX

    7人の侍...乱世、貧しい農村では野武士たちの襲来に苦しんでいた。百姓だけで闘っても勝ち目はないが、作物を盗られれば飢え死にする。百姓たちは野盗から村を守るため侍を雇うことにする。そして7人の侍と野武士と戦うことに...。

    この物語も乱世...日本史の教科書に記されたような武将の名が出てくるが、物語の主人公は孤児集団。その子供たちを預かり剣術を教えている道場。そこに今川、徳川と織田の有名な桶狭間の戦いの場面へ誘われる。説明にある、月見草のように闇に咲く名も無き侍たちとはこの孤児たちのこと。しかし時は下克上...名を馳せた武将に成りすまし...という本・贋者が入れ替わり、そのうち人格まで変わり権力の権化へ...。野望と友情の挟間に揺れる思い、抗いきれない運命に翻弄される姿が痛々しい。その人となりの心情をしっかり体現させており、観応え十分であった。もちろん演技としての殺陣(泥臭い)や剣舞(優雅さ)、演奏の楽器隊という夫々のパートで楽しませてもらった。

    その変幻自在の演出は巧み。舞台には卒塔婆が何回も持ち込まれる。そして現世と来世の境界...三途の川の渡し場での笑いネタ。時に慟哭、そしてコミカルにという硬軟の描き分け。そして何度も境界から往還するが、その件に太綱に摑まる。このシーン...芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い出してしまう。「生きたい」という強い思念そのものが生命力になっている(仏法説話の意ではなく、観せる感覚)。

    この脚本の底流にある「生命への讃歌」、「権力への揶揄」そして平和への希求(「7人の侍」時は自衛隊法、本公演では安保法が関係...偶然か)がしっかり観てとれる秀作。怒パンクで観(魅)せる時代劇。ここに「7人の侍」に通じる斬新さを感じる。生「音楽」を芝居という生身の人間が演じる舞台で融合させ、独自のステージを作り上げているようだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/07/19 00:08

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