満足度★★★★
悲しいがまっすぐな親子
時代に取り残された男のかたくななまでな生き方、そのようにしか生きられなかったピュアな男と家族の姿が胸を打つ。東京で見られなかった文学座の名舞台を、静岡の地方公演で拝見した。
どちらかというとアトリエ公演向きの舞台なのかもしれないが、今日のステージは2階席もいれれば1000人は入る大舞台だった。そんな広い空間でも後ろの方まで客席の目を引きつけ続ける演技はさすがだ。
仕事一筋に生き、リタイア後はローンの終わった家で菜園をして、結婚して家族を持った息子たちの訪問を楽しみに生きる。日本でも、現代でもありそうな普通の夢。しかも、自分の意見を曲げず、息子たちの意見を聴こうとしないいわゆる頑固おやじ。アーサーミラーの作品だが、かなり日本的というか、日本人の俳優たちが演じて味を出せる舞台だとも言える。
ラストシーン、高齢の女性客がハンカチを握りしめる姿が目立った。まっすぐな親子をまっすぐに演じた俳優たちに、拍手を送りたい。