満足度★★★★
居場所を失った人間たちの姿
異様、不気味な感じが纏わりつき、意識下に澱が沈殿していくようだ。観ているのが辛く嫌らしく感じるが、それだけ脚本・演出、そして役者の演技が優れている証であろう。まず、この物語には回答らしきものは用意されていない。この方舟の内に居る人、外にいる人(家族など)の異なる視点から捉えており、その思いは其々に違う。日本古来の集団、その小単位としての「家制度」または「家族」という血縁の中に居場所が見つけられない悲劇性。家族だから分かり過ぎて自分の心へズカズカと入り込んで精神をかき乱すのかもしれない。その掴みようがなく、得体の知れない怖さ。
さて、描かれた内容に答えはないが、このタイトル「紙の方舟」の意味は作中で説明される。それは...。