満足度★★★★
あっぱれな「楽屋」
「楽屋」フェスティバルも終盤に来てさらに追加(おかわり)観劇。観た数も参加団体の半数を超えた。
あっぱれ!と言わせる「楽屋」は、女優Aの股旅物~「かもめ」のトリゴーリンに至る「役演じ」が<あっぱれ>である事が条件の一に思われる。十ばかり観た中で二団体あったが、加えてママーズも然り。4女優いずれも腕に覚えある実力者のよう。中でも女優Aの孫貞子は新宿梁山泊出身、私の人生初観劇のテント芝居に辛うじて加わっていたか、そんな思いに感慨ひとしお。あの劇団特有のエネルギッシュな120%出し切る演技がここでも健在、一々納得させる演出(動線といい、台詞のニュアンス、間合いといい・・)とあいまって、疾風のごとく過ぎた「楽屋」であった。また、笑った。
女優Cが冒頭、「台詞を練習している」体で台詞を言えているというのも案外少なく(確かに演技として難しくはあるだろう)、その中ではっきりと「練習している」という場面の意味がくっきり明瞭に出ていたのは燐光群の中山マリと、この団体だった(他はその意味合いは伝わるのだが、本番舞台で「うまく演じている」ように練習している、という風に演じ(メタ構造・・判りづらいな)、それでもって「そんな風に練習している」と観客に理解させている。ニーナを演じる女優の貫禄を感じさせながら、なおかつ普段着な空間での、力を抜いた「練習」になっている、というのは観る側としては快感である。その分、演技としては相当な力を要するのだろう・・「楽屋」を見続けてそんな事も思う。
・・てな具合にいろいろ楽しませてもらった稀有なイベントであった。
上の団体の前にやった「とろんぷ・るいゆ」にも触れれば、前橋で活動する主宰の元に集った(やはり地元の)人たちで、女優Aを男優がやったり、キャラがAB逆転してたり(Bが豪胆、Aが弱腰・・恐らく男性がやった結果だろう)していた。ユニークだったのは途中、何箇所かで詩が挿入される。これがうまくはまっている。自ら改稿したなら、中々の書き手だ。最後には前橋にゆかりのある清水邦夫の足跡を辿った映像が終盤に流れる。「三人姉妹」の台詞を中断して・・終わると続きの台詞が畳み掛けられ、終幕へ、という段取りだ。映像は拙いものだったが、大胆な演出だった。