満足度★★★★★
贅沢な企画
「楽屋」三昧を決め込んで通し券を購入したが、既に終りが近づいてきた。淋しい。全団体は観られず、7、8団体は半数以下か(でも元は取ったか)。全部観たかったし、きっと飽きなかったろう。同じ「楽屋」のテキストをルールとしての競演が、今回初の試みだというから、コロンブスの卵だ。
「楽屋」は何度観ても面白い、よくできた戯曲だが、戯曲が要求する「理想形」が一定程度、想定されそうに思う。その意味で団体の「個性」よりは優劣が見えて来る面がある。
もちろん細部では、役の位置づけの違い、台詞のトーンの選択の違いなど、差異が見える瞬間が面白く興味深いが、全体としては「ある正解」に近づけたかどうかを競っているように見える(大胆な解釈・演出をした団体に当っていないせいかも知れないが・・)。
その点、ちょうど今d倉庫で開催している現代劇作家シリーズ・ベケット「芝居」フェスティバルなどは、自由度の高い戯曲をいかに自分ら流に調理するか、個性を競う点に特徴がありそうだ。
どちらが良いという話ではないが、「楽屋」は俳優力を試す戯曲で、「的確な」形を見たいと願ってしまう。一度「おいしい形」を目にしてしまうと、そこに至っていない団体が劣って見えてしまう、という事が起きる。しかし、それでも「楽屋」を味わわせてくれ、それとして、満足させてくれる。興味深い企画だ。