死に顔ピース 公演情報 ワンツーワークス「死に顔ピース」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    生きたいを強く意識させる秀作
    人は誰でもいつかは死ぬ、その年齢に違いがあるだけということも解っている。それでも生きたいと思う(この劇団でも描いた「自死」という問題もあるが)。人は生まれた時から死に向かって生きることになる。そうであれば何故生まれてくるのか...まさに”生まれ出悩み”である。

    本公演は、末期癌患者の在宅医療に関して描いたものであるが、実話をベースにしているだけにリアリティがある。その脚本は取材を重ね、演出は物語をしっかり印象付ける。そして役者は、一人何役もこなし、また人生観に対する変化に伴うキャラクター作りなど、其々の役者の人物造形も見事であった。

    ネタバレBOX

    自分の身近にも胃癌になった友人がいる(再発経過観察の5年は過ぎた)。”末期患者の在宅医療”におけるあり方を、本人・家族・在宅医療チームの視点から周密に観る(「診る」のほうが相応しいかも)。

    この舞台セットは客席寄りに白い椅子が横一列に並ぶ。その上に役者の顔写真パネル(遺影のようである)が置かれている。舞台三方は上部が縦格子(スリット)になった仕切り壁(途中で可動し舞台スペースが変化)で、これは全面黒である。この白と黒の配置は鯨幕という感じである。冒頭は一人ずつ職に対する希望を述べるが、写真...人はみんな死ぬことをイメージさせる。生まれたときから死に向って歩くという、究極の不条理。

    梗概は、大学病院で最先端医療に携わっていた医師が、同僚・後進の医療ミスの責任をとり、地方開業医になる。一方、看護師として働いていた40代女性(離婚し独身)が末期癌に侵され余命数ヶ月と宣告される。医療を続ける場所は、病院か自宅か。新聞記事を読むと、多くの患者は自宅を選択するとあったが、それは家族を始め周りの人への負担が掛かることも意味する。先の開業医と自宅で医療を受ける患者とその家族の心温まる話に滂沱する。患者には、まだ両親が健在で娘も2人いる。働き手の中心であったことから、経済的負担も相当だろう。そして、看病する家族の精神的・肉体的負担がしっかり描かれ、終末医療の問題・課題が浮き彫りになる。医療チームは、患者に対して は”笑い”で「生」へ繋げる励まし。そして家族へは”たまには泣いていますか”という労いの言葉。あまりに心に沁み込む台詞の数々。

    さて、自分の周りで大病した人は、宗教(入信)へ...やはり救いは神や仏にすがるのだろうか。公演では直接描かれなかったが、最期に人は、どこか拠りどころを求めるのだろうか。

    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2016/03/24 21:50

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大