満足度★★★★
ONETWOWORKSな芝居
ワンツーパンチ♪の健全精神に則って健全経営、否、健全舞台製作者を任じる集団(人?)、そんな「名前」から受ける印象が強く、書き手も教師っぽいな・・と書店の戯曲コーナーに並ぶ背表紙の、文学者を名乗りをりはべらっしゃるかのようなペンネームから強い先入観でもって何げにレッテルを貼っていた期間がかなり長くあった。ふとそれを思い出すに、目で見ずして判断する事の限界、否、いつしか判断している事の恐ろしさを、今思い出したのを機に刻み付けねばと思ったりしている。 金が無い(と思っている)と、芝居も中々見れやしないし、ハズレかも知れない代物に安くない金を財布から出す、これは何か別の動機(偏執的な、あるいは浪費的な、お金を何らかの形で流動させたい衝動・・等の?)が働いていない事には、こいつは成り立たないものであるかも知れぬ・・などと不謹慎な呟きが唇から漏れてたりする。そんな、演劇への「壁」を除り去って見える風景は、時に厳しい内容でもあるがそれ以上に、他者の脳内を覗くに匹敵する、一つの世界である。この「可能性」は、ただ事ではない・・人類の才能、特性について思わず考える。良い観劇は幸福だが、自分をあるプロセスの途上に置く体験でもある。真なるものへの途上が人生である事に気づかせる。演劇はある種の嘘を排除するので、編集や詐欺的言辞やまやかしが通用しない(そう信じたい、というだけかも知れないが)。 「ほんたう」への扉が閉ざされようとしている21世紀初頭の日本で、目を曇らせずにいる薬は、何あろう演劇、演劇、これに如くはなし!
閑話休題。今回、非・ドキュメンタリーシアターの1-2公演を初めて観た。もっともテーマがターミナルケアであり、死であるので、自殺をテーマにしたドキュメンタリーシアターを観た時の感触と大きな違いはなく、トークで作演出者も仰っていたが実話・実在人物を元に書かれた本である事がよく表れた、健全で直球な演劇だった。
直球とは言え、ファンにとってはこの劇団の特徴である「ムーブ」や、社会性を踏まえつつも湿気を帯びずドライに処する特色が嬉しいというのは判る気がする。
自分が「死」を見詰めおおせているかは甚だ怪しいが、終末医療、治療しない末期癌患者の生き方については、慣れ親しんだテーマであったのでドラマとして意外な展開はさほどなく、その代わり、役者の「人物」としての佇まい、クラウンの芸やムーブ(今回初めて「気持ち良い」と感じた・・動きの加速度が各様の動きでも揃っているのは高等技術だ)を、よく観た。
涙に流されず、その状況にある「何か」を掴もうと探り、描こうとした、それを観客にそのまま伝えようとした誠実な作品。
この劇団に感じる特徴というのはまた別にあるが、またの機会に。