満足度★★★★★
クセになる
たまらなく面白い。受けての存在を超越したマシンガンのような台詞の乱射と、状況と、無関係にも思えるような身体表現。もちろんそこには伝えたいメッセージはあるだろうけど、それを理解するよりも体感する気持ち良さに身を委ねる。ふわーっとする。●学校という場所には、もしかすると一般社会以上に「妬み、嫉み」が渦巻き、隙あらば奪おうとする。それに負けて登校が苦痛になる五月病の葛藤がリアル。「わたし」が重なり合って「わたしたち」に飲み込まれる感じに気持ち悪さが見事。●お母さんという巨大な怪獣は厄介だ。距離感の尺度が壊れている上に、ほとんどの攻撃に怯まない。母性愛という無敵のアイテムで全てを凌駕する。そんな母親を、鳥公園の西尾佳織さんが好演。あのふわっとした雰囲気が見事に作品にマッチして可愛い愛しい。●とても哲学的な作品だ。人物や人間関係を表す数式も、Y’さんと彼とのやり取りも、じっくり考えてみたら楽しいものばかり。言葉の遊び方のセンスが抜群。形容詞「難しい、厳しい…」の韻が心地よい。「恋」と「変」の使い方も上手い。人間関係は無限なπだ。●黒板のチョーク受けが斜めになったセットは教室や授業の歪みや崩壊の象徴に見えた。世の中は矛盾ばかり。硬くて柔らかく、柔らかくて硬い。全てのものが見方や捉え方で価値や意味が変わる。目に見えているものなんて僅かな一面。何も捉えられていないことを知る。●ブライアリー・ロングさんは黒船のよう。バックボーンが謎でも圧倒的な存在感。そして美しい。横の立ち姿は彫像のよう。素晴らしいものが円や球であるならば、彼女のヒップラインの丸みは紛れもなく最高の芸術品。その美しさでおかしなコトを言うのだからお手上げ。