三日月にウサギ 公演情報 9-States「三日月にウサギ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    心の彷徨...閉塞からの解放を求めて
    表層的に物語を捉えると、その閉鎖性のある街から出ないのか、また逆にそれを承知で入ってくるのか、という疑問が生じる。しかし、そこは敢えてそういう状況の中で展開していく波紋の色々…そんな感じがする。
    公演の雰囲気は沈滞的であり不気味な感じもする。何か起こるだろうという、その不思議感覚が面白い。
    芝居の台詞にもあったが、ジャンルにとらわれると本質を見誤る...この劇の狙いはどこにあるのか。自分としては、”生きる”をしない者と”生きたい”者が出会って、心的交流から見える彷徨では...。
    この公演は2ヶ月連続公演Vol.2となっており、前回はホテルが舞台であったが、今回はジャズ喫茶である。そのセットは...

    ネタバレBOX

    基本的(舞台セット)は、同じようだ。中央から下手側にカウンターとスツール、中央にトイレ、上手に店の出入り口がある。下手客席側に懐かしいゲーム機1台。中央に丸テーブル席・椅子がある。

    主人公は、ウサギ(山田青史サン)と三木薫(倉垣まどかサン)の2人。この両人の”生きて行く”ことから生じる、周囲の人達の思惑と誤算による悲喜劇といった感じである。
    何故だか、波形を見ただけで少し先の未来のようなものが見えてしまう。一瞬SFかと思わせるようなところもあるが、それは枝葉のようであった。その先読みに頼って日銭(パチンコの回転率等)を稼いでいたが、この街から出るため大金を得る算段をする。金融(FX)で勝負することを企むが...。
    そんな時、他の街から薫がやって来て、ウサギに能動的に”生きてみよう”と働きかける。その薫は父親から性的虐待を受けており、外見を男の格好にし、必死に生きてきた。そんな生き方に違いがある人と人の出会い。生きるのが息苦しくなったら「(三日)月にでも住むか」、「波形読まずに未来ワクワク」という台詞が何となく悲しい。

    人として強欲を持つ者、無欲の者、または多くの欲を持たずに淡々と過ごす者、その心のあり様を捉えた時、自身に内在するもの(欲望)が透けて見えるようだ。他人から見えない内面を描こうとしているが、その表現が難しい。人は不自由からの解放=欲望を実現していくか、手っ取り早く行うためには他人を利用する。その端的手段が「金」だという。
    積極的に”生きること”にすることで周囲の人々との関係・状況が変化して行く。自分の意思と関係ないところで他人の思惑を左右する。自分が幸福を求めることで、周囲の人々を不幸にする。

    この自分と他者との「幸福」と「不幸」の逆相関がアイロニーのように感じて、芝居の沈滞・物憂げな雰囲気を追いやり滑稽にさえ思えた。
    生きる目的を持った(共有した)ことによる悲劇、無関心から派生した他人の不幸という喜劇...不可思議な公演であったが嫌いではない。

    冒頭に記した街の閉塞感について、若干の説明...家族のこと、郷土愛のような一片が見えると違った見方もできるが、好みの別れるところであろう。全体の怪しげな雰囲気の中で、彩りを見せたかったのか…高山ふみ(飯野くちばしサン)社長と従業員の会話が浮いたようで違和感があったのが残念。

    次回公演も楽しみにしております。



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    2016/01/09 00:28

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