ヘレン・ケラー 公演情報 東京演劇集団風「ヘレン・ケラー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    やはり“風”の公演は見事!
    素晴らしい クリスマスプレゼント ありがとうございました。

    この公演は、2015年上半期(4月~7月)は東日本地域巡回公演を行い、下半期(9月~12月)は九州地域を52ステージ行い、この東京公演は凱旋公演にあたる。東京演劇集団 風 では、この「ヘレン・ケラー」(脚本・松兼功 氏、演出・浅野佳成 氏)を1995年に初演しており、何度となく再演しているという。

    記憶の中で、親に初めて買ってもらった本が「偉人伝 ヘレン・ケラー」である。遠い世界の人と思っていたが、後から調べてみると、その本を読んだ時にはまだ存命であった。

    三重苦というハンデを乗り越え、「ことば」の意味を理解し、単語から文章になり人に伝えるようになる。それはアニー・サリバンとの出会いがなければ...そう考えると人の縁の不思議を感じる。

    ネタバレBOX

    この公演は、ヘレン・ケラー誕生(1880年6月)から「物、事柄」「ことば」に意味があることを認識する1887年夏までを描いている。もちろん、見せ場は井戸で水を汲み...waterと叫ぶシーンである。
    舞台は、中央部に室内、執務室などのシーンによってセットを搬入・搬出する。ヘレン・ケラーが好んで触っていた、蔓草…蔦も上・下手に取り付けていた。実に細かいところまで見せる。もちろん井戸(ポンプ)は、下手客席側にある。

    この演劇集団の劇風は丁寧・重厚というイメージを持っている。今回公演も例外ではないが、扱う題材(人物)にしては、暗く重苦しくならず、どちらかと言えば明るい感じすらする。
    ヘレン・ケラー(倉八ほなみ サン)は、腰が引けO脚ぎみに歩くが、これは彼女の演技感性らしい(初日の乾杯時に他の劇団員から聞いた話)。
    一方、サリバン先生(高階ひかり サン)は誇張したような演技に観えるが、先に記した巡回公演では、学校体育館のような広いところでは、遠い位置から観る場合、オーバーな演技にしないとその醍醐味(いわばヘレンとの格闘)が伝わらないかもしれない(短期間での劇場用への演技修正は難しいのではないか、公演全体に影響する)。
    どちらも観せるという”端正な演技”と”実話に基づく臨場感”が自分の心を捉えた。

    現代において、人は人工物や情報が氾濫する中で、個性や意思は状況によっては飲み込まれてしまう。そんな希薄な存在に追いやられるかもしれないが、それでも不確かであっても存在はする。この公演の若い二人の女性は、単に特異な存在ではなく、誰もが持つ生きるという普遍的な意思を伝える。身体的な不自由は自覚しつつも、それでも困難を乗り越え逞しく生きる。それを周囲の人たちが温かく見守る...クリスマスに相応しい公演であった。
    地方巡回公演の取り組みも含めての評である。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2015/12/26 22:27

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