満足度★★★
ロボットと人間の境界
人間をその比較対象とする場合の「ロボット」とは、ロボット的存在・・即ち、明確な目的がありそのための行為(仕事)を行う存在のことで、人間がロボット的である局面を見出すことが目論見の一方。他方ではロボットが人間に近づき、「人間的」という尺度において精度を増したときの、ロボットの「人間的」あり方を見出す。時代を、既にそんなロボットが登場している未来に設定し、一見区別のつかないロボットと人間が共存している状況を、今の私たちの生活風景の延長として眺めてみる・・ そこがこの作品の狙いだろうかと思う。
このアプローチで多彩なシーンを連ねた「ロボット・人間エピソード集」となっており、精神科のカウンセリングに来る相談者と医師との対話など、興味深いシーンも幾つかあった。しかし、この着想が触手を伸ばし得るだけの幅は各エピソードに見られるのだが、一つ漠然とした印象を脱せなかったのはなぜか・・。 うまく言えないが「主語」が統一されていない感じ、とでも言おうか、見方を統一できない感じが残った。人間にとって切実な問題につながる警告というようなものになっている訳ではなく、面白がるならもっとやっちゃって良いのではないか、とも思う。あるいは、表現上の拙さの問題だろうか(俳優の)。
ロボット=人間論は面白いテーマだ。テキストの練り上げの余地があり、今後もバージョンを変えるなどで(断続的にでも、シリーズ化などして)温めていってほしい。