イルクーツク物語 公演情報 劇団俳小「イルクーツク物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    丁寧な描き
    旧ソビエト時代、バイカル湖の南、イルクーツク近郊を流れるアンガラ川にある発電所の建設現場で働く者とその恋人が織り成す話。脚本が書かれた時代状況や、日本での初演(劇団民藝)のことは、当日パンフに記載されている。
    その内容は、女性主人公ワーリャ(舞山裕子サン)が苦難を乗り越え成長する様と、それを温かく見守る人々の交流が感動的に描かれる。二部構成2時間30分(途中休憩 10分)は“生きるため”を中心に、友情・恋愛・誕生・自立といった個々のテーマが織り込まれ、見事な絵柄を仕立て上げた。
    さて、ワーリャは、劇中で披露されるカルメンと姿を重ね合わせることができるが、そのラストは...。

    ネタバレBOX

    梗概は、発電所の近くにある売店で働く人気者ワーリャ... 「安売り女」と陰口を叩かれながらも自由奔放に振舞う。建設現場で働く男2人(親友同士)からも好意を寄せられるが、その悪い噂にも関わらず誠意を貫いた男と結婚した。双子の子供も生まれて幸せな生活も夫が事故死(近所の子供を助けるため溺死)するという不幸が襲う。失意にある彼女を建設現場の人達が助ける。その場面は、国情や時代といった背景を理解しないと感じ難いところもある。例えば、現代日本・資本主義における金銭感覚からすれば、5人分の労働を4人で行い、1人分を...。 富の再分配をイメージするような発想が出来るだろうか。その当時の国家体制だからこそなし得るような気もする。

    ワーリャの生き方は、一部と二部とでは異なる。特に二部は、結婚・妊娠・出産・死別を経て、発電所で働き子供達を育てていく、そんな力強さが感じられる。
    雰囲気も一部の若者らしい溌刺(はつらつ)、瑞々しさから、二部では落ち着いた大人、そして生活感が出ている。その演技は安定しており、キャストのバランスもよく安心して観ていられる。

    日本で女性の自立や自由が声高に語られるようになったのは1970年代になってからだという。この物語は1950年代のことが書かれており、青春群像劇でありつつ、自立していくという、当時としては新しい女性像を描いている。その意味できわめて先見性のある公演(脚本)だと思う。今、その物語を上演するということは、政府の成長戦略の主要施策“すべての女性が輝く社会づくり”を打ち出していることに呼応するのだろうか(取り合えず、その運用の善し悪しは別)。
    物語の展開は丁寧で、その心情描写も繊細である。公演全体は、細部を描くというミニマニズムを感じるが、その底流にある“逞しく生きる”という姿は、現代日本の女性へのエールにも見える。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/12/13 20:29

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