満足度★★★★★
素晴らしい演劇!
野崎参りは,印象的な始まりだった。遊女・小菊は,なじみ客による舟遊びの最中のようだ。しかし,わがままな彼女は,船は乗り心地が悪い,もはや,野崎参りもあんた一人でいけばいいと騒いでいる。この場面は,意外とおもしろかった。客はたいがい遊女にバカにされて,振り回されるものなのだろう。
次におかしかったのは,野崎参りの場で,与兵衛は喧嘩に巻き込まれ,人妻のお吉が助けるところだ。亭主が,娘に何があったか尋ねた。すると,楽し気に二人で裸になって,一つ部屋に閉じこもったままであるという。確かに,子どもにはそのように見えたが,悋気な亭主は邪推するのだ。
最後の見せ場は,油まみれになったお吉のセリフだ。子どももいるのだから,後生だから命だけは助けてくれ!というのを無視して,与兵衛は残忍な人殺しに徹するのだ。その罪を隠して,しゃあしゃあと法事の席に出て,悪事が暴露されていく。近松門左衛門の世界は意外にも現代的なシーンが多かった。