ドラマ・ドクター 公演情報 ティーファクトリー「ドラマ・ドクター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    役者の演技に身を委ねて分かる奥深さ
    10/26夜、吉祥寺シアターで上演されたティーファクトリー公演『ドラマ・ドクター』を観てきた。
    この舞台を観に行くことにしたきっかけは、出演者の中に女優・岡田あがさがいたから。数年前、東京国際映画祭に参加した映画『死神ターニャ』を観たことがあった。この映画にデビュー以来応援している役者が出演していた関係からだったのだが、映画の中で妙に存在感のある女優がいた。それが岡田あがさだった。彼女の存在を知った自分は、映画ではなく舞台での彼女の演技を観たくなり、今回ようやくその思いが実現したというわけだ。

    出かける前にネットでこの舞台の口コミ評を観たのだが、どうも不評のようであったが、実際に観終わった直後にTwitterに投稿した自分の一口感想は、「舞台は、ネットの口コミ批評ではあまり評判がよくなかったけれど、それはこの舞台に感動をもとめたからだろう。そうではなく、ここで観客は感心と関心を求められていたように思う」と書いた。ちょっと難しい感想なのだが、実際に観ていただくとこの意味する所が何となくではあるがわかっていただけると思う。

    ネタバレBOX

    さて、物語は次のようなもの。
    人気劇作家のヘンリーとライバルのトニーは、プロデューサーであるヘルマン・プレミンジャーから「どこにもない物語」の共同執筆を依頼される。二人は書き始めるのだが、書くことの出発点の設定から持ち味の異なることからなかなか上手く書き進められず、結局書き手が書くことに困ったときに手助けしてくれるドラマ・ドクターも元に行くことになる。ドラマ・ドクターは、書き手に書くヒントを与えたり、時には代筆も請け負うことがあるらしく、二人は過去に何度か彼の診察を受けたらしい。実際に行ってみると、そこにはヘンリーの作った劇を観たことがあるというアスラムという男とがおり、更には二人の知人である女性作家サラも診察に来ていた。結局、ヘンリーとトニーはサラも加えた三人で共同執筆することにし、「どこにもない物語」を書くヒントがありそうな洞窟の奥へと姿を消していく……というのが、実はドラマ・ドクター自身の書いていた物語だったのだが、書き終えたつもりのドクターの前に、三人がドクターの意志に反して物語の中で勝手に動き回る事態に遭遇し、混沌と困惑の中で舞台は幕を下ろす。
    舞台上で起きていることは、時には現実、時には小説の中の出来事で、人が死んでもすぐに生き返るという具合だ。

    観客は、現実と小説の中の世界を行き来知る役者の演技が創りだすゆらぎの中に身を任せて行けば、なかなか楽しめる。ドクター、ヘンリー、トニーの三人では淡白というか平凡に終わってしまいそうな中に、アスラムとサラを登場させることで劇に内容にメリハリがハッキリ付いた。その意味では、特にアスラムの存在は大きい。
    岡田あがさ、予想していたよりも陽的な演技で新鮮だった。
    ちなみに、やはりドクター役の河原雅彦の演技が、舞台全体を支配していた。
    時には笑いの怒る場面はあるが、感動で涙するというシーンは皆無。
    観客は、物語を書くという過程がどんなことなのかに関心を持ち、それ的確に表現していく役者の演技と物語の持つ力の大きさに感心する。それが出来れば、大いに楽しめる舞台であろう。

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    2015/10/30 13:43

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