満足度★★★★
どこまでも黒い別役世界
メルヘンチックな作品にもどことなく毒というか、刃が隠されている感のある別役実の世界。本作も、ドンキホーテばりの勘違い「騎士」でも登場するのほほんとしたお話と思いきや、真逆であった(戯曲を読まず観劇)。
この作品が書かれた頃は、人死にが出るドラマでの「死」を一つの隠喩として味わったのかも知れない。そのフシが戯曲にもある。生きたいというが何のため?との問いに答えられない男・・。だが、もはや作り手(俳優、演出)自身が、舞台上の「死」を比喩的に扱う事が出来ないのではないか。恐ろしい光景が、平安な日常にピリリとスパイス、では終わらないのである。二人の老俳優(達者であった)の「死」や「殺し」についてのまるで世間話のような会話は、達観を誰もが疑わないこの俳優以外に考えられない、くらいに嵌まっていた。
この形が別役氏の狙いであったかどうかは分からないが。