事故でも事件でも
子供が被害者であると、その悲劇度は増す。遺族の悲しみはあまりに深く暗い。加害者が少年の犯罪になれば、怒りの矛先までも失われてしまった気分になることさえ…。愛するわが子を失った喪失感を埋めるために選んだこと。あまりに大きな穴に蓋をするのは並大抵のことではできやしない。クローン人間の是非を問われているのかと思ったが、そうではなかった。愛情を注ぐ矛先を失った家族の視線で考えていたことを、突然ひっくり返された時に自分の中に湧き上がった動揺。あの気持ち悪さは新鮮だった。失われた人生を取り戻すことはできるのか。あるいは新たな人生の意義を見出せるのか。着眼点の面白い興味深い作品だった。ただ、余分な物語が入り込んでいるようにも思う。もう少しブラッシュアップして物語を絞り込んでくれた方が、思考はより深い所へ入っていけたような気がする。本には今後の可能性を感じた。演技は、まだまだ改善の余地があると思う。