満足度★★★★
家族になるために
文学座の石橋徹郎、小野事務所の占部房子の熱演が舞台をリードし、アルメニア人虐殺で心に深い傷を負いながらも生き残った男と女が家族になっていく姿を描く。
目の前で家族を殺された男の子、そして女の子。米国にたどり着いた男は同郷の女を妻に迎え、自分が子供時代に幸せだったような家族を作ろうとする。だが、その妻も虐殺で凄惨な過去を持つ。夫と生きようと自らを語り前に進もうとする妻。男は心の傷を奥深くしまいこんで家族の作り直しに努めるが、妻の痛みを理解できない。そんな二人を変えたのは、孤児院を逃げ出した少年だった。
演出の栗山民也がずっと前から温めていたという、リチャード・カリノスキーの台本をシンプルな舞台装置で展開した。力のある二人の俳優だからこそできた、悲しくも温かい舞台だ。