満足度★★★★
力強く、素朴に。丁寧に戯曲を奏でることの面白さ
アパルトヘイト下(1973年初演)の南アフリカ。ケープタウン沖のロベン島にある政治犯刑務所には、人種隔離政策に抵抗した黒人たちも収監されている。ジョン(窪田壮史)は懲役10年、ウィンストン(野坂弘)は終身刑に服している。白人の看守たちによる非人道的な扱いに苦しみながら、数日後に控えた演芸会で『アンティゴネー』を演じ、白人支配に対する抵抗を示そうとするジョン。ウィンストンも渋々協力する。牢の中での奇妙な稽古が始まった――。
日本人が一般的に最も理解しにくい人種差別をめぐるテーマにどれだけ踏み込めるか、と身構える観客もいたはずだ。しかし、根幹にあるのは、どん底の極限状態における人間の尊厳をめぐるドラマに相違ない。