美しい日々 公演情報 TEAM 6g「美しい日々」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    花五重丸
     三拍子揃った素晴らしい劇団を発見した。笑いも随所に織り込みながら、オープニングからラスト迄、一貫して程よい運びで否応なく観客を虜にしてくれる。

    ネタバレBOX

    信の構造
      基本的に舞台は終始病院の相部屋で展開する。相部屋に同居しているのは、自称ミュージシャン、ピザ屋のバイトで生計を立てている岩瀬、岩瀬といつも漫才のような口論を戦わせている元甲子園のエースで現在は2軍の秋山。院内で落語をやり、おばあちゃん方に特に人気の守、野球部顧問だが、部員達が万引きを見つかりそうになり、無実の生徒に罪をなすりつけたことを目撃してしまった事実を公表できず、無実の生徒が校舎から飛び降り意識不明の重体となった事を悔い、自らも飛び降りて死にきれなかった直人、そして少し遅れて入院してくるのが、交通事故で怪我を負ったレストラン経営の桃井。彼は事故のショックで一時的な記憶喪失に陥っているが、妻とは離婚前提の別居中で、バイトの春香とできている。
     ところで、この病院には10年前に医療過誤による事件を隠蔽したとの噂があった。然し、証拠は挙がっていなかった。そんな噂の真偽を確かめようと守の落語のファンで弁護士の咲が入り込んでくる。事実は、如何様であるのか? という推理も無論可能だが、今作・この劇団の凄さは、上っ面ではなく、誰しもが抱える葛藤を描いている点である。その葛藤とは、卑怯。単純極まる世界を複雑怪奇な怪物に変えてしまう嘘という罠を拒むことのできない懶惰。一旦、嘘をついたが最後、それを誤魔化す為には嘘をつき続けなければならない、という単純明快な事実を背景にした悩み、と言えば通りがよいか。
     この誰しもが抱える卑怯者の壁を超える為には、自らの未来を敢えて棒に振り、取り敢えず成立している利害という名の人間関係を壊し、たった独り戦わねばならぬ、と皆考える。それで、問題解決の唯一の条件、勇気を挫かれてしまうのだ。この現実をしっかり見据えて描いているに留まらず、その解決法として信を舞台化していることが凄いのだ。この劇作家の深い人間理解と観察力、そして絶望に抗うパースペクティブに、心からなる賞賛を送りたい。また、巧みに筋を配置し構成している演出も、自然な仕上がりに達している。役者の力量も高い。

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    2015/08/27 10:47

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