からまる法則 公演情報 劇団銅鑼「からまる法則」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    野宿者支援という場所
    バブル崩壊後の90年代末頃から、都市部の駅周辺で「ダンボールハウス」が目立つようになった。その頃にあった同テーマを扱った芝居を思い出す(野宿者支援に関わる事になった診療所が舞台。行き別れた父娘の再会という設定は今作に似ている)。そちらは笑い所・泣き所のある舞台だったが、銅鑼の今作はもっとリアル寄りの舞台ながら、和む雰囲気を醸していて、こういう支援の現場が「笑い」を武器に継続している事情と、相似していると思った。
     展開に難を感じる箇所は幾つかあり、役者の動きでも損をしている所が散見されたが、作り込んだ家屋のリアルさと照明が効奏して鮮明に記憶に残るシーンがある。キャベツを切るシーンと、炊き出しの準備を全員で行なうシーン。ここ、商店街の中にあるという広めの住居を供出した「かけはし」という名の支援拠点は、学生で団体代表でもある女の子が思わず吐露するように、そこに関わる人の「居場所」。息の通う生活の場の息づかいが舞台上に見えたのがそのシーンだった。光景が写真を焚いたように焼き付けられる事はそうない。どこか大仰(コミカル)だったり淡白だったりする他の演者の中で、主役の弓田英明のみリアルな陰影があり、これも記憶にとどめる効果を持っていた(もっとも他が薄くて良いのかというモンダイは残るが‥)。

    ネタバレBOX

    実際の支援現場では、地域の苦情に対して清掃活動をするなんて事はイの一番に考えつく事で、物語の後半で「解決の糸口」に浮上して来る設定は甘いと言えば甘い。現在は自治体の手で(生保に繋げるための)住居提供がなされたりしているそうだが、勤労意欲のある人がホームレス化して来た全体状況からして問題解決とは程遠い現状があるいらしい(不勉強で詳しく知らないが‥)。 この問題を詰めれば、潜在的野宿者や失業、若者の就労問題、格差の世代間相続などに行き着く。それらはこの二十年「金持ち」「大企業」優遇にシフトして来た税制・法制度と直結しているが、「日本経済のため」という大義は、なぜか罷り通っている。富める者が利益吸い上げシステムを維持・強化したいだけにしか見えないのだが。。近年は「米国と仲良くするのが日本の国益」と言って外資に利益を提供している。国民はそれじたいが「危機」だ。 他国(アジアの隣国)から攻められる危機なんてそうそうあるものか。それにそうなった所で日米安保の枠組では米国は必ずしも出動しないというではないか。誰の利益を考えているのかこの国のエリートは‥という話も、「空気」が正論をなぎ倒す時代の流れの中では虚しい。これが「急流」になる前に、正論が話せる「居場所」を育てて行かねば。‥こんな愚痴もこういう芝居でなきゃ言えない。

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    2015/08/08 09:47

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