脚色も良い。原作を近未来のどこかにサンドイッチしているのだ。人々は何かというと戦争を繰り返した結果、既に自然も人間を含む総ての生物も殆ど絶滅しかかっている状況だ。こんな世界で傷つき、死のうとした若者を助けた医者が、この若者に自分の若い頃、未だ自然も残っていたが、戦火の絶えなかったファシズム吹き荒れる世界で、それでも何とか人間らしく生きようとしていた少数者達が仲間を作り逃げ回っていた時に、飛行機乗りの大人が教えてくれた物語を聴かせる、という設定で始まるのだ。 我が「国」をかえり見れば、度量の小ささでは戦後総理大臣で一番の、安倍のような阿保が、戦争に向かって人々を奈落へ突き落しかけている現在、アメリカの植民地、日本で弱者の視座を決して失わずに人間的に、また、原作の肝要な点も落とさずにキチンと構成された脚本も見事である。 Le petit princeの思い出を語るのは、びっこの医師。相方は妻、あいが自分そっくりに残してくれたアドロイドだ。肝心の妻は既にこの世の者ではない。爆発に巻き込まれて亡くなったのだ。今作は、総てが悲劇の色調に覆われる戦争にあって、傷つき亡くなっていった者達へのレクイエムであると同時に、生き残ってしまった者達が、明日を生きる精神の糧として構築されている点で秀逸である。 役者達の演技レベルの高さ、ダンス、バレエ、中でも幅広の布2枚を用いたアクロバティックなダンスは、注目に値する。 其々に高いレベルの表現が、戦時下の困難にあって尚、弱者の視座を忘れず、人間の大切にすべきものは何かについて、原作を見事に取り込みながら表現している作品である。