満足度★★★★★
初めて「参加」するタイプの舞台
(まずこれは表に書いておこう)
昨年のコメフェスでの主催の前説で「言葉で世界を紡ぎだす」、
「語り部」としての上手さに惹かれるものを感じ、
その上でのCoRichアワードでの人気ぶりにかなり気になっていた劇団でした。
しかし、最近Twitterで回ってきた、
本公演のCoRich「観たい!」に投稿された
「かつてファンだったのに役者からとてもひどい対応を受けた」という内容。
それを読んだ自分は
「そういうスタンスの役者がいる劇団は嫌だし、
自分もそういう目に合うのも嫌だから観劇やめておこう」
と敬遠していました。
しかし、ベテラン観劇者含む多くの方々の
「『おぼんろ』を知らない事は演劇ファンとして損である」という感想。
それを読んで、
「(事実は知らないですが)ネットのマイナス投稿1つで
自分にとって”何か新しいもの”に触れるかも
知れない機会を捨てるのはもったいないな」と
とりあえず1回は観劇してみる事にしました。
吉祥寺シアターに着いて、
「あ、ここは倉庫型劇場で、
高さなどあまりに広い舞台スペースのせいで
舞台と観客との距離感がありすぎ、
全然役者の感情などが伝わってこなかった、
ちょっと自分は苦手な劇場だったな・・・」と
過去1度観劇していた事に気付きました。
などのマイナス要因を胸に抱えていたのですが、
1.「溢れるほどのホスピタリティ」
開場時、まさか舞台開演前の一番集中したいであろう時間に
主催が入り口で観客全員と握手し、
場内では役者陣がそれぞれ
「ゴベリンドンは初めてですか?ならこちらの席がいいですよ」と案内し、
更には知り合いだけでなく知らない1人客に対しても笑顔を向けて、
これから始まる物語の世界について楽しそうに語って歩く面々。
聞いていたマイナス評価と全く逆の観客を大切にしようとする行為の数々、
(元々このスタイルでやられているのかは知りませんが)
この雰囲気自体がまず自分の観劇経験の中で初めて知る空気でした。
(人見知りな自分でさえも、つい開演前から楽しくなってしまう、
舞台自体へのワクワク感も増していく、
そんな空気を実際舞台に立つ役者陣が率先して創りだすとは・・・)
そして、
2.「見事すぎる劇場空間の使い方」
スペースが広すぎる、高すぎる、事を良い方向に活かし、
全方位に観客席を配置し、また開演後も舞台上のみならず
観客席の端から端までを動きまわり、
まさに役者の息遣いが観客に伝わる、そんな近距離での
「語り部」5人の夢の空間でした。
(観客を「参加者」と呼ぶ、その理由をまさに体感しました。
あれは「舞台を眺める」ではなく、
一緒に「参加」している空間で起きる「出来事」そのものでした。)
そして何よりも、
主催が始めに語る「昔おばあちゃんから聞いたお伽話の世界」、
そう、「お伽話」そのものでした。
お芝居といえば役者がセリフと所作/表情や身体での表現などで
演じるものが中心となりますが、
おぼんろはその「語り部」として物語についての語りを使い、
「参加者」側の想像力を試し、
そして「参加者」の心象風景として物語の世界を描き出します。
語られる物語自体についても、笑い、涙、驚き、謎解きなど
色々な要素の詰まった、とても素晴らしいお伽話でした。
本劇に「参加」出来た事が自分にとって幸せです。