満足度★★★★
ポップなイキウメ
<瓜二つの誰それ>による混乱は『十二夜』『間違いの喜劇』の昔から喜劇の常道だが、イキウメの今回の舞台は<もう一人の誰それ>を怪奇な出来事として、真顔で登場人物に認識させ、追求させる。しかしそれでも会場に笑いが沸いたのは、古来の笑いの図式が正しく当て嵌まっていたからだろう。こんなに「笑っていい」イキウメは初めてだった。
話はといえば、よくよく考えれば実は本当の答えは判らないのだが、世間的落伍者の物好きに好奇心という名の武器を存分に発揮させ、仮説を立てて検証し、最終的解決へと向かわせる一つのサスペンスストーリーになっている。話としては一応の決着を見る。ただ決着じたいに「演劇的収まり」以上の意味はなく、ただうっすらと、超常現象とか不可解な出来事とか、現実にも起こり得るという、そういう未知な世界に今も我々が生きている事の「不安」と「希望」がないまぜに漂う余韻が、やはりイキウメの持ち味だ。
・・・と、いい気分でまとめたくはなるのだが、最後に残るグロテスクな問題がこの劇にはある。これについては「一応の解決」を見る流れで観客を納得させているが、この「グロい」存在の問いかけが、忘れた頃に「続編」としておぞましく姿を現わしそうで・・・楽しみである。(いやもしかしたら既に書いてるかも知れないが)