満足度★★★★
奇妙な世界
観客に媚びることのない独特のシュールな世界観が魅力的で、1時間弱の間で一瞬も集中力を失わせない作品でした。
開場すると、壁で三角形に仕切られたステージに既に女性ダンサーが静かに佇んでいて、オペレーターの2人が入って来て始まり、更に男性ダンサーが入って来て激しくないものの異様なテンションを感じるパフォーマンスが展開しました。途中からはおそらくラジコンにカバーを被せた、照明を仕込んだオブジェが登場し不気味なユーモアを感じさせました。時折照明が切り替わり『美しく青きドナウ』が流れて、奇妙なデュオを踊るシークエンスが何度か繰り返された後、終盤で不意に客席が明るくなり、何事も無かったかの様にまた暗くなり、今度は壁の向こう側が明るくなりそのまま終わってしまうという、人を食ったような雰囲気が魅力的でした。
結局何が言いたいのかさっぱり分からず、奇妙な印象だけを与えたまま終わりましたが、逆にその突き放し方が爽快でした。
LED照明を用いた青や緑の一色の光に照らされた空間やダンサーが非現実的で印象的でした。動きもいわゆるダンスとはかなり異なるタイプで、重力の方向や空間が歪んで感じられる様な人間離れしたムーブメントやポーズが飄々と繰り広げられて不思議な感覚でした。冒頭の女性ダンサーの常に微かに揺れながら繊細に異様な形を作って行くシーンや、デュオで絡みあって手足がどちらのものか分からなくなって行くのが刺激的でした。
おそらくステージ上の椅子やダンサーにマイクが仕込まれていて、それを増幅して音と動きの関係を意識させる手法が興味深かったです。