今はただ遠くからありふれた歌を- 公演情報 演劇企画ハッピー圏外「今はただ遠くからありふれた歌を-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ベタだが、心温まる作品
     操縦シーンに好感を持った。

    ネタバレBOX

     難病の為、冷凍されていた純ちゃん(11歳)は、孤児。施設で育った。大の仲良しが篤っちゃんと敏ちゃんだ。50年後、漸く安定して来た解凍技術のお陰で蘇生した純。出迎えてくれたのは、もう、初老に達した篤ちゃんと敏ちゃんだった。彼らは、川崎の多摩区で板金工場を経営していて、ロボット製作なども手掛け、その道では世界トップクラスの技術者になっていた。そして、彼女が冷凍される前にした約束を果たす為に、今では、法で禁じられた二足歩行ロボットを秘密裏に開発していた。然し、彼らの技術力の高さを誰も放っておいてくれない。何故なら、家事用実用ロボット、7c型マルチパーパスコンテナを初めて作ったのは彼らだったし、そのオリジナルは、現在も、家族の一員として、この家内工場で活発に動き回っていた。純ちゃん達の食事も彼が作ってくれる。
     だが、流石に50年の時は世相を大きく変えていた。あの時まで、IT技術の進歩によって社会インフラの管理は、総てコンピュータ制御になり、ネットで繋がった社会は効率的で、合理的であるかに見えた。
    然し、ある時期を境に、コンピュータの中に自ら意志を持ち、人間に対して悪意ある攻撃を仕掛けて来る者が現れた。その為世界中が大混乱を起こし、殆ど、国が崩壊する所迄行ったケースが何件もあった。その為、人間は、総てのネットに機器を繋げることを禁止せざるを得なかった。何故なら、意志ある電脳体が人間を殺してやろうと思えば、電源を落としてやるだけで、ネットワークに繋がる電源総てが落ち、病院や社会的インフラは忽ち機能停止する。患者のケアをしていた機器類は一斉にストップする。人間はこの事態に恐怖した。同時に暴走の原因を、暴力的なコンテンツやそのプログラムが人工知能に悪影響を与えた為と考え、メディアから、一切の攻撃的・暴力的表現を排除した。無論、暴走を始めた人工知能の支配するエリアにアクセスすることはタブーとなりインターネットへの接続もできなくなったのみならず、何時頃からかギリシャの都市国家のように、都道府県単位で独立国家化したエリアは、互いの利権を争って戦争を始めていた。同盟相手は政治や状況によって変わる。各々の地域内部では、その地域の法があり、他のエリアと個別法が異なるのは当然のことであった。
     ところで、篤っちゃん達の仲間には、NASAから受注を受けている耐熱・耐衝撃パネルを制作できる瓦屋、山下も居た。つまりこのエリアは、世界トップレベルの中小企業が集まる一大集積地でもあったのである。
     そんなこんなで、この工場には、様々なスパイが潜り込んでいた。ある者は事務員として、ある者は、実際に工場内に忍び込む形で、そして、各地域の政府・軍関係者は地元警察と手を組む、というようにして。
     偶々、このエリアの地元の優秀な警察関係者長尾の娘、美樹が難病に掛かり、敵対する東京では認可されている薬が、このエリアで認可される迄にはまだ5年の歳月が必要とされていた。然し、娘の体はそれ迄持たない。冷凍されて、薬の認可を待てばよいのだが、彼女の母が冷凍された時に技術が追いつかず酷い後遺症を患ってしまった為、娘は冷凍に対する恐怖感を克服できずにいた。彼女の掛かっている担当医は純ちゃんと同じであったことから、美樹と純は仲良くなる。一方、長尾は、横浜の軍関係者から、東京の医者に掛かり、件の薬を調達することと引き換えに、篤っちゃん達の工場で開発されていると噂される二足歩行ロボットの件を確認し、あれば確保するよう求められる。横浜サイドは約束通り、娘の新しい病院への転院手続き書を用意した。ロボットを発見しながら、純ちゃんと娘の関係や、三人組の事情を慮って知らぬふりを決め込んだ長尾だったが、横浜から攻められて、工場へ向かう。が、皆の機転で、警察には手に負えないと報告してメンタルな繋がりの出来た者同士の激突は避けることができた。だが、千葉のスパイだった事務員の麻木が、純ちゃんと美樹を拉致、麻木は、何かに彼女らを載せて強い雨で増水した多摩川に流してしまった。和恵と彼女の部下が車で純達を追うが、多摩川を挟んで、横浜軍、千葉軍が対峙し、戦車からの砲弾や戦闘機による空爆で純達が載せられた筏のようなものに近付くこともできない。おまけに、純ちゃんは頭痛がし出した。未だ、冷凍技術の未熟な時代に冷凍された純の脳は、ダメージを受けており、頭痛がし出したら6時間以内にオペを受けなければ重大な結果を生ずる。
     救出手段は一つ。一つあるだけだ。無論、ロボットの起動である。純達の位置確認等、データ収集は、パーパスコンテナが自らが電脳世界に取り込まれることを覚悟した上でインターネットにアクセスし集める他に無い。起動及び操縦は、スパイとして潜り込んでいた源次郎が行う。
    無論、巨大な二足歩行ロボットを作る程、劇団に資金は無いから、知恵を使っている。コクピットだけを舞台中央に作ってあったのだ。観客側が開いた箱の中に椅子を据えて操縦席とし、箱の上手・下手に両端を繋いだロープのような物を数本ずつつけ、足元には、パーカッションのスネアドラム用足踏みのような器具を作って、役者があっちこっちと懸命に動かすのである。これは、若い男の役者しか出来ないほどハードな動きだが、演じた中川 敏伸を褒めるべきだろう。
    篤っちゃん、敏ちゃんは、捕まってしまった。行方は分からぬものの、純は信じている。二人が元気でいることを。だって、三人には、未だ他の約束も残っているから。幸い、純の手術は間に合ったばかりか難手術も成功し、術後の経過も良い。今度は、純が待つ番になった。行方が分からなくなってしまった二人を。残りの約束を果たす為に。








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    2014/09/17 19:01

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