きらめく星座 公演情報 こまつ座「きらめく星座」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    日本の道義
    2009年5月以来の『きらめく星座』の観劇でした。

    ネタバレBOX

    今年6月に観た『てんぷくトリオのコント』では、井上ひさしさんの死後三年が経過し、井上麻矢さんが新たに立ち上げた企画だったことを知りましたが、同時にその中でコントは変えてもいいが芝居は一字一句変えてほしくないとの希望があったことが明らかにされ、その言葉が本当かどうかは知る由もありませんが、本作品はオリジナル版でした。

    オデオン堂というレコード店を通じて、戦争を前にした人々の様子が描かれました。昭和15年11月3日(明治節)の場では長男の脱走が明かされ、昭和16年2月11日(紀元節)の場では、長女が傷痍軍人と結婚し非国民の家から美談の家に変わったことと、長男が九州の炭鉱から逃げてきたことが描かれ、昭和16年4月29日(天長節)の場では長男が銚子のイワシ缶詰工場から逃げてきました。休憩を挟んで、昭和16年8月15日(終戦記念日の4年前)の場では長男は上海航路に潜り込んでいて羽振りが良く、昭和16年11月23日(新嘗祭)の場では、長男は山形の農村からボロをまとって戻ってきて、上海航路の日本人乗客には一発旗揚げを狙うやつ、山師、女ったらししかいなく、中国人給仕を平気で殴るのに嫌気が差したと船を降りた経緯を語り、根っからの軍人だった長女の夫もその話を聞いて、蒋介石様々と言う工場経営者と軍のお偉方との会話を思い出し、日本の道義に疑念が生じると失った左手が痛み出すという精神的症状に苦しみます。最後は昭和16年12月7日(開戦前夜)の場で、オデオン堂接収のため父親夫婦は後妻の故郷長崎へ、下宿人は満州で先生に、もう一人の下宿人は音楽学校へ、長女夫婦は夫が病院に入院するため市川へ、長男は国鉄の車掌をしているという状況下で、明日出征するという近隣の青年のために元歌手だった後妻が「青空」を歌い、その後全員で歌い、銘々がそれなりに生きていこうと何となく前向きに見えた直後、防毒マスクをつけた記念写真のような図になり、悲惨な未来を暗示するような形で終わりました。

    始まってすぐに長崎という言葉が出て、原爆に遭うことが想定されました。ラスト近くの秋山菜津子さんの「青空」は良かったです。そして、町内会長さんや役所の人に愛想良くしていればという言葉も当たっていたと思われますので結構重たかったです。

    レコード店が舞台であり、音楽劇となるのは已むを得ないとは思いますが、こまつ座のピアノを使った音楽劇にも少々飽きてきました。軽妙さが分かりやすさに繋がっているわけでもありません。オリジナルに縛られ過ぎも如何なものかなと思います。しっとりとした描き方、例えば吉田小夏さんの『星の結び目』のような描き方で演出してくれるとまた違った感動が得られるのではないかと思いました。

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    2014/09/09 21:12

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