満足度★★★★
騙りのための語り!
とにかく堀越涼の語りが巧くて惚れる。堀越によるオープニングの怪談を聴いているとき、彼は笑顔なのに鬼の面をかぶっているような得体の知れなさを醸していた。芝居の始まりは、劇団主宰の挨拶という体で、そこから生演奏&歌(歌謡曲)、台詞で、現実と物語の境界が溶けていく。
舞台美術の陰陽の模様が、浮き上がることもなく衣装、俳優たちと溶け込んでいた。この劇場には、真ん中に大きな柱が一本あるのだが、その柱をうまくつかって陰から顔を出すことにより、不穏な空気を盛り上げていく演出はさりげなくて見事。
作品の後味の悪さというか、不気味さは最後まで残って、ぞっとさせる。こんなおぞましく美しい語りは堀越だけのものだと思うし、彼を観ていると「語り」が「騙り」として人々を虚構の世界にいざなうものであることを、しみじみと感じる。前作『淡仙女』での、神への生け贄の花嫁と、都会のストリッパーとを重ねる描写はとても魅力的で、堀越の美学(演劇、女性、すべての虚構への)がびしびし伝わってきた。これからも、あのような意外性のある人間像と、聖俗の融解する境目を見せてくれるような団体であってほしい。