ONE LOOKY TWO IN 公演情報 株式会社Legs&Loins「ONE LOOKY TWO IN」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    Persona Train
     こちらを拝見。朗読と演劇が一体となったような作品で、ちょっと硬派。内容的には素晴らしいの一言に尽きる。照明がかなり暗いシーンが多いので、ほんの少し、カム場面もあったが、そんなことは全然気にならないほど、優れた内容であった。

    ネタバレBOX

    「真の文明は、山を荒らさず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし」足尾鉱毒事件で有名な田中 正造の言葉である。彼は、「亡国に至るを知らざれば 之れ即ち亡国」との名言も残している人だが、今作では、このような名言、茨城 のり子「自分の感受性くらい」「汲む」、谷川 俊太郎「二十億光年の孤独」「朝のリレー」、三好 達治「土」、宮沢 賢治「アメニモマケズ」などの詩、1992年リオデジャネイロで開かれた環境サミットで演説したセヴァン・スズキ(当時12歳の少女)の伝説となったスピーチwww.youtube.com/watch?v=C2g473JWAEg。ストリートチルドレンの語った話等々の引用を巧みに構成しつつ、相補的に、早朝4時のラジオ番組パーソナリティーを務める中年男、スケアクロウとリスナーのやりとりを通じて現実世界を対置する。例えば、マイケル・サンデルの有名な設問「暴走列車問題」を巡っての苛められっ子との問答や、孤独死を遂げるに至った男と姉と別れた妻、及び日独ハーフの息子。息子とドイツ人の彼女の微妙な関係等々を織り込み、頼りない我らの日常生活に煌めく言語表現を織り込んでめくるめき織物に仕立てた。途中何度も言及されるバタフライエフェクトが、蚕が繭を紡ぐ時に、張り巡らす糸のように、一見関係無いと思われる事象を繋げて行く。

    作品のコアと思えるのが、茨城 のり子の「汲む」に盛られた思想だ。弱さを根底に、世界の総てと向き合ってゆく。つまり自分の弱さをアンテナとして生き切る姿勢が、バタフライエフェクトとして世界を変える縁になってゆく。その形を、自分達がやっている演劇に重ねて表現した過不足のないメッセージと構成の見事さ、志の高さと、今言うべきことを言う勇気、演者たちのイマジネーションの確かさを観た今作、お薦めである。
    以下、自分が作品の核となったと考えた茨城 のり子の「汲む」を引用しておく。

    汲む
     ―Y・Yに―

    大人になるというのは
    すれっからしになることだと
    思い込んでいた少女の頃
    立居振舞の美しい
    発音の正確な
    素敵な女のひとと会いました
    そのひとは私の背のびを見すかしたように
    なにげない話に言いました

    初々しさが大切なの
    人に対しても世の中に対しても
    人を人とも思わなくなったとき
    堕落が始るのね 墜ちてゆくのを
    隠そうとしても 隠せなかった人を何人も見ました

    私はどきんとし
    そして深く悟りました

    大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
    ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
    失語症 なめらかでないしぐさ
    子供の悪態にさえ傷ついてしまう
    頼りない生牡蠣のような感受性
    それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
    年老いても咲きたての薔薇  柔らかく
    外にむかってひらかれるのこそ難しい
    あらゆる仕事
    すべてのいい仕事の核には
    震える弱いアンテナが隠されている きっと……
    わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました
    たちかえり
    今もときどきその意味を
    ひっそり汲むことがあるのです 」


    5

    2014/06/05 22:50

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  • 石原 吉郎は、天賦の才としては、谷川 俊太郎以上の才能でしょう。所謂現代詩の詩人の中でも、ぴか一。彼と張り合える現代詩の詩人は、タイプは全くことなるものの、田村 隆一。大岡 信、山本 太郎が引っ掛かる位ではないでしょうか。因みに山本 太郎は北原白秋の親戚でもあります。「ゴリラ」などでも有名ですね。石原さん、最後は自死なさいましたが、吉原 幸子さんとは、仲が良かったようですね。自分も石原さんとお会いできるチャンスがあったのに、結局、お会いできずに他界されました。吉原さんとは、お会いしていますが。女流詩人で好きだったのは、石垣 りんさん。物凄く頭のよい、怖いほどの切れ者でしたね。因みに、石原さんは、シベリア抑留されていた方なので、帰国は随分遅れました。詩人としてのデビューもその分、遅く重い詩が多いのですが、「サンチョパンサの帰郷」は彼の処女詩集のタイトルであると共に、彼の優れた詩の中で、自分が最も好きな詩でもあります。話がとびとびでごめんなさい。

    2014/06/07 05:14

    ハンダラ様
    石原 吉郎の「サンチョパンサの帰郷」 まだ読んだことないです。
    この機会に一度、読みたいと思います。
    感じたことを、そのまま表現する、ことをガチっとやっていく栄養素となりそうです。
    金子 光晴もしかりですね。
    あと2回、しっかりと届けたいと思います。
    お気遣いもありがとうございます。

    2014/06/06 23:42

     二段構えになっていて、一段目に入力してコメントを投稿するをクリックしてもアップされないのは、不都合のようにも思いますね。何はともあれ、バイアスを取っ払って生きてゆきましょう。

    2014/06/06 08:25

     ホントに良い舞台でした。表現する者として徹底的に率直に生きてゆきたいものですね。真の創造性は、このような生き方の中にしかありません。多くのホントにアホな日本人が、考えているつもりの他人に合わせる生き方の中には、淀みしかないからです。谷川の「朝のリレー」はテクニックが見え透いて余り好きな詩ではありません。寧ろ、田村 隆一の言葉なんか憶えるんじゃなかった(表記が異なるかも知れません)の一行。石原 吉郎の「サンチョパンサの帰郷」などの方がずっと良い詩だと思います。金子 光晴の何篇かとか。楽まで、皆さまお体ご自愛くださいね。
                                                        ハンダラ 拝

    2014/06/06 08:18

    ハンダラ様

    足元の悪い中、ご観賞、ありがとうございました。このコメント、胸が熱くなりました。俳優とスタッフ一同、伝えさせて頂きますね。この演劇の意味、自身改めて感じます。

    2014/06/06 00:22

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