満足度★★★
独創的な表現で描かれた地獄
自身の演奏活動をしつつ、コクーン歌舞伎や新国立劇場の舞台音楽を手掛けているミュージシャンの国広和毅さんが時々自動としては初の外部からの作・演出を勤めた作品で、ざらっとしたアナーキーな雰囲気で仏教的世界が描かれ、独特の質感が印象的でした。
冒頭は演出家やパフォーマー達が役柄ではなく本人として登場して話し、ドキュメンタリー演劇的な展開になるかと思いきや、特殊な発声・奏法による演奏や3ピースバンドKisamaAlternativeの演奏シーンと、白い衣装を着た仏と蜘蛛を象徴する2人が登場する『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)の物語とが断片的に交差し、物語と演奏が独特のバランスで組み合わさった構成となっていました。
世代論もテーマの1つとなっていて、前半では芸術/音楽論と絡ませながら語られていたのですが、後半ではあまり展開しない印象を受け、物足りなく感じました。
金管楽器に木管楽器のマウスピースを付けて吹いたり、風船の空気で管楽器を鳴らしたり、楽器の中に水を入れて吹いたり、サックスを上下逆に構えて演奏したりと普通ではない奏法を多用し、奇妙な音響が繰り広げられていて、かつ身体の存在感としてもドラマチックな効果があり、興味深かったです。