料亭老松物語 公演情報 劇団芝居屋「料亭老松物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    世話物の最高峰
    世話物の最高峰は、泣き笑い表現にある。今作で芝居屋は、その域に達した。同時に我々観客の鑑識眼をも高めてくれている。(追記2014.5.24)
     
     老松のお上、時江役、永井 利枝の壺を得た演技、小料理屋のお上役で時江の娘同然の美千代役の増田 恵美のこれまた入念な演技、前にも書いたことだが、この劇団の役者は若手も含め極めてレベルが高い。演劇通が安心して観ていられると評価するのは、この為だ。他、舞台美術の粋、借景のコンセプトを用いた舞台美術と老松の建築様式を述べた下りとの照応など、相変わらず隙の無い見事な作りだ。

    ネタバレBOX

      少し具体例を挙げておこう。舞台は、最も奥に美千代の仕切る小料理屋が設えてあり、その手前は、老松のお上の部屋。暗転の間に港のコンクリート壁が据えられるシーンも入ってくる。
     小料理屋は、上手に出入り口があって、店に入ると直ぐ右手に貸し鉢の木が置いてあるが、植木鉢を隠すのはよしずだろう。観客席正面の上手には丸窓が切ってある。これは、角型の窓と異なり、作るのに大変高い技術を要する。この点だけを見ても、小料理屋の通な好みが推し量れる。無論、背景には三味線の音がし、美千代はどどいつなども心得る。下手奥のカウンターの壁には、桜の老樹が満開の姿で描かれ、華やいだ空気が感じられるのだが、その回りは、総て木目調で統一されている為、千利休が、高位の者をもてなす為に、一輪を除いて総ての花を取り去って、茶を供したという話等も想起させる。同時に、木目を象徴として見るならば、深い森にすら想像力は及ぶであろう。この小料理屋の作りが、老松の建築様式、鴬張りの長い渡り廊下を通って大広間へ出た時、その庭の彼方に広がる広大な太平洋と道東の街並みに対応し、当然のことながら海と山と空を借景とする見事なパノラマを形成するのである。
     北海道の雄大な自然をこのようなセットで想像的に再現する中で、物語は展開してゆくのだが、芝居屋の役者の優れている所は、役者個々人が、常に演出の言いなりになるのではなく、役者一人一人が、新たな表現を追求している点にある。役を本当に生きようとしているから役に血が通い、活きているのである。座長の増田さんご自身がおっしゃっていたことで言えば、間という言葉一つにしても、それが意味する所は、「内なる言葉」ということではないだろうか? 自分は、この言葉を伺って、納得してしまった。
     今回、劇場入り口には出演者の顔写真が貼られている。自分達が責任をもって努めます、という挨拶であると同時に、役中、どの人物が誰を演じているか、確認して頂くも良し、お披露目ととって頂くもよろしかろう。兎に角、通って頂きたい舞台である。

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    2014/05/23 12:47

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